第14回日本エイズ学会学術集会・総会
会 長 速 水 正 憲
(京都大学ウイルス研究所エイズ研究施設感染病態研究領域 教授)
第14回日本エイズ学会学術集会を2000年(平成12年)11月28〜30日、京都テルサにおいて開催いたします。
人類史に残る今世紀最後の大きな出来事であるエイズの出現から、そろそろ20年経ちます。21世紀を前にして今迄の私達とエイズとの関わりを整理して、21世紀におけるエイズ研究の展望を計れればと思います。
アフリカの奥地で平和に暮らしていたHIVも人間界に引きずり出された今、必死に生き残ろうとしています。その戦略は変わり身の早さによる「多様性」の拡大にあります。それが、「薬剤耐性」ウイルスの出現やワクチン開発の困難さに表われております。(本学術集会では「薬剤耐性」と「ワクチン開発」を医学関係の大きなテーマとして取り上げました。)しかしHIVの本懐は決して人類を滅亡させることではなく、むしろ人類との共存を望んでいます。現在はHIVがアフリカ奥地での狭い生態系から、人類を含む地球規模の生態系に組み入れられつつある過程ととらえることができます。このようなHIVとどうつきあっていくかを考える機会にできたらと思います。
エイズの本態を知るには、自分の専門分野からのみの視点ではなく、様々な角度からのエイズとの関わりを知る必要があると思います。このことにより自分自身の取り組む姿勢が見えてくるのではないでしょうか。
このようなことから、各専門分野における問題を掘り下げることも大切ですが、それと同様に「異なる専門分野間の交流の促進」を積極的に計る工夫をしてみました。
1、ポスター発表の併用
一般演題(と一部のワークショップ)では口演のみではなくポスター発表も併せてお願いします。
口演を聴くのは、自分の専門分野に限られがちですが、空いた時間に他分野のポスター会場に足を運んで下さい。当然、同じ分野でも聴きのがした演題や細かいデータの確認、さらなる十分な議論の為にポスターを利用して下さい。ポスター会場に異なる分野の方々の談論の輪がいくつかできることを希望しています。
2、一般口演の簡潔化
ポスターを併用することから、一般口演は従来の7分に代わって5分としました。細かいデータの説明を省き、目的・(材料・方法)・結果・(考察)・結論に準じて、伝えたいメッセージを伝えるのに十分な時間と思います。短時間で多くの発表をきけますので、その分野の研究状況と問題点をつかみ易いと思います。細かい議論はポスター会場でお願いします。
短時間の口演を効率よく行う為に、全ての一般口演と大部分のワークショップを【OHP】の使用にしました。御批判もあると思いますが、他学会で成功している例もありますので、御協力下さい。
3、重点課題からなるワークショップ
一般の方からを始め多くの理事・プログラム委員から提案のありました重要テーマを運営委員会で整理して、14のワークショップを設けました。これらのワークショップにより、各専門分野内や分野間における最近の重要課題と問題点を容易に理解していただけると思います。
4、交流会(Get Together)
2日目(29日)17:30から19:30まで、レストラン「朱雀」(東館一階)で交流会(無料)を行いますので、参加してください。本学会の特色は多種多様な立場の人々から構成されている点にあります。お互いに知り合い、交歓する場となることを希望します。多くの方々に参加していただけるように、会費無料としました。こちらで用意しました軽食と飲み物が早くなくなり過ぎると悲鳴をあげるほどに多くの方々の参加をお願いいたします。2日目、全プログラムの終了後、夜の京都の街に出る前にのぞいてみて下さい。もし、会場が狭くてはみ出した方は、ポスター会場にも軽い飲み物を用意しておきます。
以上のように、今回、これ迄にない試みをさせていただきますので御協力下さい。
その他にも例年どおりの招待講演、特別講演、シンポジウム等をいくつか企画しており、既に多くの方々が運営委員やオーガナイザーとして、またその下準備に意欲的に取り組んでいただいております。これらの方々に感謝するとともに、学会は会長や事務局のみではなく、参加される一人一人の方々によって作られるのだということを実感しています。
当日、お目にかかれるのをお互いに楽しみにしましょう。