98年11月29日更新
労働省は障害者認定を受けたHIV感染者を障害者雇用促進法の対象とし、雇用主に各種の助成処置を講ずることを決めた。12月1日から施行される。
HIV感染者の雇用促進を目的としたものだが、HIV感染者が職場に感染の事実を安心して告げるにはプライバシー保護や受け入れ体制の整備などが求められる。
98年12月1日から施行
HIVに感染しているからという理由で解雇することは労働省の通達でも禁じられているが、これまで感染者の雇用を促進する対策はなされていなかった。しかしHIV感染者の障害者認定が今年4月から開始されたことで、認定を受けたHIV感染者が障害者雇用促進法の対象に含まれるのかどうかが注目されていた。
労働省職業安定局高齢・障害者対策部障害者雇用対策課は11月6日、障害者雇用審議会の答申を受け、障害者の雇用の促進等に関する法律施行令を改正し、障害者認定を受けたHIV感染者を障害者雇用促進法の対象とし、各種の助成処置を講ずることを決めた。12月1日から施行される。
法定雇用率とは?
同法は常用労働者数56人以上の規模の企業の事業主に、全従業員の1.8%以上の障害者雇用を義務付けている(法定雇用率)。公団、事業団等の特殊法人は2.1%(常用労働者数48人以上規模の法人)、国、地方公共団体は2.1%(職員数48人以上の機関、ただし、都道府県等の教育委員会は2.0%、職員数50人以上の機関)となっている。この法定雇用率は平成10年7月1日より施行されている(平成9年4月の法改正により、法定雇用率の算定基礎に精神薄弱者が加えられたことに伴う変更)。
また身体障害者らを雇用する事業主には、その賃金の一部を支給する特定求職者雇用調整助成金制度などが適用される。
答申をした同審議会は、HIV感染者は「適切な雇用管理をすれば、長期にわたる職業生活の継続が可能」と判断し、同法上の身体障害者の対象として雇用を促進するよう求めたのだ。
ちなみに民間企業の雇用障害者数は98年6月現在で約251,443人、雇用率は1.48%。前年に比べ0.01ポイント上昇したが、法定雇用率には達していない。特殊法人の雇用率は前年より0.03ポイント上昇し、1.99%。国、地方公共団体の非現業的機関の雇用率は前年より0.04ポイント上昇し2.06%。現業的機関の雇用率は前年より0.05ポイント上昇し2.30%だった。
※民間企業等に実際に雇用されている精神薄弱者については、実雇用率(各企業ごとの、その雇用する労働者数に対する、その雇用する身体障害者である労働者の割合)の算定に当たり身体障害者と同様にカウントできることとされている。さらに重度身体障害者及び重度精神薄弱者については、それぞれその1人の雇用をもって、2人の身体障害者を雇用しているものとみなされる。また、短時間労働者は原則的に実雇用率にはカウントされないが、重度身体障害者又は重度精神薄弱者については、それぞれ1人の身体障害者を雇用しているものとみなされる。
労働省のあげる留意事項
労働省の高齢・障害者対策部が98年6月から9月にかけて行った「HIV感染者に係る雇用問題に関する研究会」は「HIVによる身体障害を有する者の雇用の促進及び職業の安定を図るための施策を整備していくことが必要」とし、報告書の中で雇用対策のあり方や雇用管理上の留意事項などについて述べている。
留意事項の一部は以下のようなものだが、こうした施策の早急な整備を望みたい。
[職務内容]
[勤務条件]
[情報管理]
[募集・採用等]
労働省発表資料より
http://www.jil.go.jp/kisya/syokuan/981120_01_sy/981120_01_sy.htmlタイトル:「障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令」について
発 表:平成10年11月20日(金)
担 当:労働省職業安定局高齢・障害者対策部障害者雇用対策課
電 話 03-3593-1211(内線5783)
03-3595-1173(夜間直通)標記については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)に規定する身体障害の範囲に「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害」を新たに加えるため、去る10月16日障害者雇用審議会(会長 三澤義一 筑波大学名誉教授)に「障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱」を諮問し、11月6日に答申を得たところである。
労働省においては、これを受けて「障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案」を作成し、本日、同政令案について閣議に付議し、閣議決定がなされたところである。
なお、標記政令の施行期日は平成10年12月1日としている。
障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱
一 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害を政令で定める障害に加える
ものとすること。二 この政令は、平成十年十二月一日から施行するものとすること。
労働省発表資料より
http://www.jil.go.jp/kisya/syokuan/981106_04_sy/981106_04_sy.html
タイトル:障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱についての障害者雇用審議会の答申について
発 表:平成10年11月6日(金)
担 当:労働省職業安定局高齢・障害者対策部障害者雇用対策課
電 話 03-3593-1211(内線5783)
03-3595-1173(夜間直通)1 HIV感染者については、免疫機能の低下及びその治療に起因する就業上の困難を抱えているが、適切な雇用管理等を行うことにより、長期にわたり職業生活を継続することが可能となってきている。
2 このため、「ヒト免疫不全ウィルスによる免疫の機能」の障害を、新たに障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「法」という。)上の身体障害の範囲に加え、障害者雇用率制度の対象とするとともに、各種の助成措置を講ずること等により、その雇用の促進や職業の安定を図っていく必要が生じている。
3 このような状況を踏まえ、労働省では、10月16日に障害者雇用審議会(会長 三澤 義一 筑波大学名誉教授)に対して「障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱」について諮問を行い、本日、諮問を概ね妥当と認める旨の答申を得た。
労働省は、今後、これを踏まえ、平成10年12月1日の施行に向けて法施行令等の改正を行うこととしている。4 なお、本法における身体障害の範囲については、福祉施策と雇用施策のリンクを図り、総合的な身体障害者対策に寄与する観点から身体障害者福祉法の身体障害の範囲に合致させてきたところである(身体障害者福祉法施行令の改正により、平成10年4月1日からHIVによる免疫機能障害が福祉施策上の身体障害の範囲に追加されている。)。
答申第12号
平成10年11月6日労働大臣 甘 利 明 殿
障害者雇用審議会
会長 三 澤 義 一本審議会は、平成10年10月16日付け労働省発職第230号をもって諮問のあった「障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱」について審議した結果、下記のとおり答申する。
記 労働省案は、概ね妥当であると認める。
労働省発職第230号
障害者雇用審議会
会長 三澤義一 殿
障害者の雇用の促進等に関する法律第73条の規定に基づき、別紙「障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱」について、貴会の意見を求める。
平成10年10月16日
労働大臣 甘 利 明
別紙
障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱
一 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害を政令で定める障害に加え
るものとすること。二 この政令は、平成十年十二月一日から施行するものとすること。