エイズダンサソンにマドンナからのダイレクトメール
	鬼塚直樹

---

ライヴミュージックと供に5時間踊り続けるエイズダンサソン。
そこにはエイズに真摯に取り組むアメリカの強さと明るさが渦巻いている。

ファンドレイジング（募金活動）の多用な形態

　アメリカのファンドレイジング（募金活動）には色々な形態があって、その一つにファンドレイジングの趣旨に賛同した個人が、自分の肉体（あるいは精神）を駆使する催し物に参加する、そしてその行為に対して家族、友人あるいは会社の同僚から支援金を募り、それを主催団体に寄付する、といったものがある。
　ここサンフランシスコで有名なものには「エイズ・ウォーク」があり、昨年は約2万人の有志がゴールデン・ゲート・パークに集まり10キロの道のりを歩き、合計で850万ドル（約3億円）の募金を集めた。
　このようなファンドレイジングはサンフランシスコにおいて年間を通じて多くの団体が色々な規模で行っている。
　さて、今回がエイズ・ダンサソンである。「何々ーソン」というのは造成語で、その語源はマラソンであり、単調な運動を長時間にわたって行なうときに使われる。

「ダンサソン」「バイカソン」「エアロビアソン」も

　例えば、バイカソンというのはバイク（自転車）にのってとてつもない長い距離を走ること、エアロビアソンというのは、長時間にわたって飛んだり跳ねたりのエアロビックスをやること、などである。
　したがって、ダンサソンとは何時間もの間踊り続ける、ということはもうお解りいただけたと思う。
　そして今回サンフランシスコで催されるエイズ・ダンサソンは、参加者が一堂に会し、ライブミュージックと伴に時間にわたり踊り続けるというものである。目的はもちろんエイズ関係団体の資金を募る、ということである。
　このエイズ・ダンサソンは1986年に始まっている。最初はいくつかのディスコが協力しあっての小規模な催し物だった。募金の総額も10万ドル前後であったようだ。
　しかし昨年度、その募金総額が86万ドルへと急増してしまったサンフランシスコのフォートメイソン・センターの二つのパビリオンをつなげた大会場に4100人の参加者が、5時間にわたり踊り続けたわけである。
　では、いったいなぜ募金の総額が急増してしまったのだろう？

「マドンナ」のインボルブメントで募金総額も急増

　主催団体が規模を一つも二つも大きくしたところで取り組んでいこうとした姿勢の変化にその理由があるかもしれないが、このような取り組み方の変化を可能にしたことが一つ考えられる。それは「マドンナ」のインボルブメントである。
　主催者団体の話によると、マドンナは彼女の友人や仕事仲間をエイズによって亡くしており、常にエイズ関係の活動に参加したいとの要望を持っていた。そしてこのエイズ・ダンサソンへの参加を決定したとのこと。
　昨年のニューヨークの会場には彼女自身が姿を見せ、雰囲気を大いに盛り上げた。彼女の起爆力はやはりたいしたもので、サンフランシスコ、ニューヨークのほかロスでもこのダンサソンは行なわれているわけだが、それぞれの募金総額も急激な上昇を見たということである。
　実際このイベントへの参加を促すダイレクトメールは彼女の名前を使ってばたまかれており、サンフランシスコでは今年5000人の参加を目指しているということである。また、75ドル以上の募金を集めなければ、入場できないという規制になっており、数年前の状況と比較した時、その違いは眼を見張るものがある。

---

DANCE FOR THE RIGHT THING!

　今年のサンフランシスコ・エイズ・ダンサソンのスローガンは"DANCE FOR THE RIGHT THING!"である。"THE RIGHT THING"〜正しいこと、とはいったい何なのか。
　エイズとは恐ろしい病気である。ヘテロ（異性愛者）、ゲイ、男性、女性、子供、老人を問わず、誰もがその脅威にさらされている。ではえいずに罹った人は"THE RIGHT THING"をしなかったからなのか。いや、そうではなく、エイズを私たちが一員である社会、国家、あるいはそのような境界線を取り払ったこの世界全体が直面している一つの大きな問題として取り上げ、ＨＩＶ感染者やＡＩＤＳ患者が人間の尊厳を保持し、この難病と闘うことのできる状況を作り上げていくこと、これこそが"THE RIGHT THING"ではないだろうか。
　1993年3月13日、サンフランシスコのフォートメイソン・センターで5000人が"DANCE FOR THE RIGHT THING!"のスローガンのもと、気持ちを一つにして7時から真夜中まで踊り続ける。そこには、サンフランシスコが、そしてアメリカが、しいては全人類が直面している問題に、真摯な態度で取り組もうとしているアメリカの強さが、その明るさと一緒になって、大きく渦巻くはずである。

　私達のリーダーが、その言葉にさえ触れようとしない今、あなたは過ぎ去るのをただ待つのではなく、アクションを起こしたのです。人々が避けようとしている今、あなたはＰＷＡの人たちに手を差し伸べてのです。どうか5000人もの人たちが一緒に躍ることで何ができるか示してください。

　ダンサソンはとても過激なパーティになりますよ。センセーショナルなライヴ・パフォーマンス、とびきりファンキーなＤＪ、ドリンク・フードもフリーで出ます。そして、こんなとんでもないパーティにふさわしい音と光があふれるでしょう。あなたはダンスを踊りながらきっと知ります。ビートのひとつひとつが、何千ものＰＷＡの人たちのサポートを援助することを。去年のサンフランシルコ・ウォカソンで集まった850万ドルと同様に、今回のダンサソンで集まるお金も、ＰＷＡの人たちへの多くのサービス、エデュケーション・プログラム、予防活動、そして政府の無関心さを無くすためのキャンペーンに使われます。

　このパーティはサンフランシスコで行なわれるパーティの中で最もすばらしいものです。このパーティに参加したいときには、同封のカードを送って下さい。すぐに書類を送ります。どうぞ寄付集めをしてください。会場に収容できる人数に限度があるため、入場できるのは75ドル以上の寄付を集められた方に限らせていただきます。

　いつか克服を祝ってみんなでダンスを踊れますように。［マドンナ］