94年2月5日エイズサポート千葉の勉強会に参加してきました。今回は、都立大塚病院で医療ソーシャルワーカーをしておられる山崎寿子さんが講師に招かれ、HIV感染に伴って生じる経済的、心理社会的な問題に対しどの様なアプローチが可能かといったお話を伺ってきました。その内容はたいへん興味深いものでした。ニュースレターを通じてより多くの方に知ってもらえたら、と思っています。また、不明な点、疑問点、ご意見などございましたらご連絡いただければ幸いです。■1.医療費について
がある。ここではポピュラーな健康保険、国民健康保険についてあげる。それぞれの保健は、
の自己負担が義務ずけられている。
また、健保に加入していた者が退職した場合。
以上のb,c,dは保険や自治体によってかなり異なり、また審査も厳しいがケースバイケースで工夫は可能のこと(つまり自治体によっても異なるが、ずいぶんといろいろ相談にのってくれるところもあるらしい)。
その他、結核、らい、等の伝染病。労災や公害、原爆等に関する医療、難病等も公費負担の適応となる。
以上のものは原則として本人が所定の窓口まで出向いて手続きをするか、代理人による申請も可能。
■2.所得保障について
また、民間サラリーマンや船員の場合は厚生年金にも加入しているので、障害厚生年金も支給される。
これら年金はいうまでもなく、一定期間保険期料を支払うことが前提となる。
また、障害年金を申請するにあたって規定の書類を作成する訳だが、その祭、その書類を作成できるドクターがその資格を有しているかどうか確認すること。そうでない場合は社会保険事務所や国民年金課に問い合わせれば紹介してもらえる。
注:障害年金についての詳細はLAPニュースレター7号・8号をご参照下さい
生活保護を申請すると、まず福祉事務所よる資産調査が行われる。また受理されて保護がからも、届出や指示に従う義務等が定められている。が、様々な権利も与えられている。
生活保護の申請先→福祉事務所。または民生委員に相談してもよい
■3.社会福祉制度について
これらの障害の程度によって等級が決められる。
[a.福祉サービスの内容]
申請にあたり、必要な書類を福祉事務所でもらい指定医に作成してもらう。それをもって福祉事務所へ申請する。指定医は事務所で紹介してくれる。
■4.プライバシーについて
各制度のおける守秘義務、及びエイズ予防法により罰則規定が定められているものの、病名を出して保健診療を受ける事にはためらいと不安をかんじずにはいられないのが現状の様である。
現在、HIV感染により診療を受けている方の中には、HIVとわかる内容の診察に対しては自費で、わからない内容のものには保険を使用して、という様に使い分けている。しかし、月に約5万円程度のAZT、10万円程度のddIを服用した場合、かかる経済負担はかなりのものである事が予想される。
身体的な苦痛を抱える病者がその上に社会的負担をも破ることのない様に、との理念の基につくられ、実施されている様々な制度が、その本来の機能を発揮できる社会づくりが、望まれている。■5.その他
診療拒否にあった場合はどうすればよいか、という質問が出た。
本来、医療とは全ての人に与えられるものであり、病院は倫理的な問題に対し判断を下す場所ではない。だから、当然診療拒否はあり得ない事なのだが、事実、そういう話も耳にするし、また、見方を変えれば、いくらでも診療拒否はあり得る。そうした場合は、堂々と保健予防課に訴える事。
最後に山崎さんから参考になりそうな本の紹介がありました。
『HOW TO 生活保護
〜くらしに困ったときの生活保護のすすめ〜』
東京ソーシャル・ワーク編 現代書館刊 ¥1380
感想
非常に盛り沢山の内容で、あっという間に過ぎた2時間でした。また、この日はソーシャル・ワーカーの他、看護婦、カウンセラー等専門職の方が多く、現実的な問題についても伺えたのはラッキーでした。
法律や制度イコール固い、絶対的というイメージがありますが、こうして勉強してみると、結局それをつくるのも使うのもにんげんであって、いかにドクターやソーシャルワーカーとの間にいい人間関係が築けるか、この点に法律や制度を活用しつつ楽しく暮らすコツがあるんじゃないかな、と思いました(結局、基本は人間関係なんですね。何でも!でも、だからこそプライバシーの問題が生じるのですが)。
ただ、こうした制度は知らないと使えないし、実際問題、HIV感染がわかったとしても、それだけで十分精神的には疲労するのに、制度を利用する為にあちこち出かけて行ってオソーシャル・ワーカーや医師と掛け合ったりするのはかなりしんどい事ではないでしょうか。その為にも、今後、LAPのバディトレーニングの中に、こうして法律や制度に関する勉強会も取り入れ、いざという時に、代わりに動けるような体制づくりの必要性も感じました。それと、やはり、保険を使用した際に、レセプトがもれてしまうなか、それを防ぐ手立てはないのか、その点についてが気になりました。
▼参考文献
▼付記
[照会先]
医薬品副作用被害救済・研究振興基金
事業部 医薬副作用被害救済・研究振興基金
TEL.03(3988)2990
「血液製剤に混入したHIVにより健康被害を受けた方の救済等について」
医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(医薬品機構)ホームページより
http://www.kiko.go.jp/help/blood.html