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PWAの食事療法について

あさみ 

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サポーティヴ・セラピー2 下痢編

- 1994年4月3日に田端区民センターで勉強会が行われました。
 テーマは『サポーティヴ(オルタナティヴ)セラピー2〜PWAの食事療法について〜』 でした。PWAの代表的な症状である下痢を主として取り上げました。参加者には、ナース・薬剤師と極めた方(?)も多く、現役を退いて久しい私は鋭いつっこみにしどろもどろでした。

一日に何をどれだけ食べたらよいか

〔各食品群の特徴〕

1群:
良質タンパク質や、日本人の食生活で不足しがちなカルシウム・ビタミンを豊富に含む食品。
2群:
筋肉や肌、髪、爪や血液のもととなる良質タンパク質や、ビタミン・カリシウムを含む食品。
3群:
体の代謝を円滑にさせるビタミン・ミネラル・繊維を含む食品。
4群:
力や体温のもとになる糖質・脂質・たんぱく質を含む食品。

各食品群の特徴の図表各食品群の特徴の図表

 図表のうち1群〜3群の食品は、表中に示した位の量は是非とりたいものです。
 4群に主食として6枚切りの食パン1枚と白米330g(コンビニのおにぎり1個が約100gです)を加えた場合、食事中の栄養素量のうちビタミンA(VA)・ビタミンC(VC)・カルシウム(Ca)・たんぱく質は軽い労作を行う成人男女の栄養所要量を充分に満たします(通常の調理におけるビタミンの損失を考慮しても)。
 ただ、特に女性は鉄分(Fe)が、男女共にビタミンB(VB)、ビタミンB2(VB2)がやや不足しますのでFeを多く含む食品を選んだり、米飯にビタミン補給剤(昔ビタライス、今は新玄だそうです)を加える等、工夫が必要です。
 PWAの場合、しっかり食事をとる事が重要になってきます。高エネルギー食にする場合には、4群の主食量を増やすと共に1群〜3群も平均的に増やします(〔図表〕に示した食品は一例で、食べる側の好みや体質により牛乳をヨーグルトに代えたり、チーズを無くして牛乳を多くしたり、豆腐の代わりにミニ納豆を1パック食べたりと応用できます)。従って図表より栄養的に充足した食事になってきます。一応、栄養士の肩書きを持つ私がこんな事を言うのも何ですが、図表の食品を毎日加不足無くとる事はとてもむずかしい、と言うより無理です。外食で肉料理を食べれば60gなんて量では済みませんし、1日2回肉をたべることもあるでしょう。
 私は食事とは楽しいものであるべきだと思うのです。特に医師からの制約が無い限り、神経質に栄養所要量にとらわれない方が良いのではないでしょうか? ケーキがあんまりおいしそうだったので4個食べちゃったから砂糖のとり過ぎ! と気にしたりせず、おいしかったという満足感とその時の友達との楽しい会話等は、きっと心の栄養になっているはずです。
 ただ、心の片すみに、何をどれだけ食べれば良いかの表が残っていれば、これからの食生活が少しは変わるのではないかなと、そちらに私は期待したいです。

つっこみのフォロー
- 芋類に含まれるビタミC(VC)は他の食品のそれよりも加熱損失が少ないとのことの私の発言について「どうしてなのか」という質問がありましたが・・・。
さつま芋やじゃが芋に含まれるVCの加熱損失は10%〜20%と少ない(キャベツやホウレン草では調理によって50%〜65%の損失がみられる)。これは細胞内でんぷんの糊化によってVCの溶出(VCは水溶性のビタミンです)が防止されることや細胞膜の破壊が少ないため、細胞内VCが外部の酸素にふれる機会が少ない等によると考えられる…とのこと。

下痢の時の食事方針・・・腸に刺激を与えない

■いろいろな刺激

  1. 繊維による刺激:繊維の多いもの固いものはさけるか、よく煮て裏ごしにします。
  2. ガスによる刺激:ビール、炭酸飲料は炭酸ガスを含有するので避けます。ガス発酵を起こすものは砂糖、あん類、菓子、果物です。果物は繊維による機械的刺激の他含有する有機酸によって科学的刺激を与え、分解して生ずる炭酸ガスによってさらに刺激するので煮て使用します。
  3. 香辛料などによる刺激:カレー、わさび、唐辛子等の香辛料、酢、レモン汁等は、ひかえめにするべきですが、少量であれば食欲亢進用として使用してもよいでしょう。 -
  4. 量による刺激:一度の食事量が多いと腸の運動、分泌を亢進させるので、一度に食べないで何回かに分けて食べましょう。
  5. 温度による刺激:冷水、 アイスクリーム等、冷たい食物は控えます。ヨーグルト、ゼリー等は、少しずつ口の中で温めるようにして(妙な表現ですが)食べれば差しつかえありません。
  6. 脂肪性食品:脂肪の過剰摂取は下痢を助長するので料理に使う油は控え、脂肪の多い肉、魚は避けます。

■食品の選び方と調理

  1. 穀類

    -

    • ご飯は白米を全粥か軟飯にします。赤飯、麦飯は避けた方が良いでしょう。
    • うどんは焼きうどんのように油を使わなければよいです。 症状によって煮込みにします。 そばは避けた方がよいでしょう。
    • パンは油分の少ないもの(⇔ブリオシュ、ペストリー、クロワッサン)を軽く焼くとよいでしょう。黒パンは避けた方が良いでしょう。
    • 餅(白玉粉)は、消化時間がややご飯より長くなり、胸やけを起こしやすいのですが、消化吸収はご飯と変わりません。
    • パスタ類・麺は消化が良いので適しますが、オートミールは避けた方が良いでしょう。
  2. 芋、でんぷん類

    -

    • さつま芋は発酵しやすいので避けます。
    • 長芋は煮るよりすった方が消化がよくなります。
  3. 果物類
    • 軟らかい果物をえらびます。 (バナナ、桃等)
    • 固い物でも冠詰や煮た物なら構いません。
    • 柿、干し柿、梨は不消化のため避けます。
  4. 魚介類

    -

    • 肉にくらべて消化、吸収がよいのですが、脂肪の少ない魚を選びます。
    • カキ以外の貝類は不消化のため避けます。
    • 塩漬け、干物もさけます。素材の持つ油分が酸化しているので、胃腸に負担がかかる事と、少なくとも生食用の魚介類より鮮度が落ちているので。
    • はんぺんはよいのですが、カマボコ、チクワ等は咀しゃくしにくく、胃内滞留時間も3時間15分と長いので控えましょう。
  5. 肉類
    • 脂肪の少ない挽き肉、ささみ、若鶏、鶏レバーを蒸したり煮たりして使用します。
    • 加熱すると固くなる牛肉や豚肉はさけます。
  6. 卵類
    • 鶏卵はたんぱく質源として最も良質です。胃内消化時間は半熟卵1.5時間、生卵2.5時間、固茹で卵3.5時間の順に長くなるので、半熟がよいでしょう。
    • 卵は油の吸収がよいので、テフロン加工のフライパンを使うとよいです。
    • 魚卵は、まわりの膜がケラチン質の固い膜におおわれ、消化に難点があります。
  7. 豆、大豆製品
    • 豆類は発酵しやすいので避けた方がよいでしょう。
    • 豆腐、焼き豆腐、凍り豆腐、きなこははよいのですが、油揚げ、がんもどき、生揚げは、よく油抜きして控えめにしましょう。おからは避けましょう。(繊維と油が多いので)
  8. 乳、乳製品
    • 牛乳のタンパク質は非常に良質で、脂肪も消化吸収されやすい形で含まれています。
    • そのまま飲むよりも、クリーム煮や牛乳ゼリーとして使う方がよいでしょう。
    • 牛乳で下痢をする人はヨーグルトがよいでしょう。
  9. 油脂類
    • 消化という点からみると、バター、生クリーム、卵黄がよいです(天然の乳化型油脂)。
    • 揚げ物は避け、少量の油で調理しましょう。
    • マヨネーズ、マーガリン、バターは一日10 程度は大丈夫です。
  10. 野菜類

    -

    • 生のまま食べずに、軟らかく調理します。
  11. 海草類
    • 味付けのり、焼きのり、のりの佃煮、青のり粉、寒天はよいでしょう。市販のゼリーに含まれる、カラギーナンもよいです。
    • ひじきやわかめ、昆布は普通食が食べられるようになってからにします。
  12. きのこ類
    • 普通食が食べられるようになってからにします。
  13. 調味料
    • 砂糖、みりんは甘すぎないように使います。
    • 酢、香辛料は控えめにしましょう。
    • 料理の酒はアルコールが飛ぶのでかまいません。
  14. 嗜好品

    -

    • アルコール飲料、炭酸飲料、コーヒー、甘すぎるお菓子はやめましょう(と、本にキッパリ書いていました)。

実際のメニュー作り

基礎知識を得たあと、2グループに分かれて、下痢の時のメニュー作りをしましたが、 皆さんの過去の経験から(?)か、上出来のメニューとなりました。

  • 軟飯        
  • みそ汁(大根、ふ)
  • 煮魚(カレイ)
  • 卵豆腐
  • カボチャ煮とりそぼろ
  • あんかけ(カボチャの皮は除く)
  • ラタトゥイユ風(人参、ジャガ芋、玉ネギ、トマトピューレ)
  • バナナとりんご(生の薄いいちょう切り)入りヨーグルト
  • くずもち(黒みつ、きなこ)
  • ゼリー
  • 寒天寄せ

  • 軟飯
  • みそ汁(大根+α)
  • カボチャ煮とそぼろあんかけ(カボチャの皮は除く)
  • 茶わん蒸し(卵、ぎんなん、えび、かまぼこしいたけ、みつ葉)
  • リンゴのコンポート
  • ヨーグルト


 太字の食品は問題があるのではないかと、取り上げた部分です。 デザートを何種類も考える所は、さすがグルメなLAPの勉強会ならではと感心しました。下痢の時は気分的にも滅入るでしょうし、小食になりがちですが、何分の一かは下痢の際にも吸収されています。 食事の際に食欲を出す工夫をして、特にタンパク質が十分とれるように食事療法を進めてゆきたいものです。水分の補給も大切です。電解質飲料を利用すれば、排泄されたミネラルが補える。でも糖分のとりすぎになる、乳児用のアイソトニック飲料ならば成分がおだやかではないか等、盛んな意見交換の中、勉強会は終了しました。

PWAに隣接したバデイ

- 私事ですが、先日、入院しているPWAの方に食事を届ける機会がありまして、時前に体調や食欲のある事を聞いて、自宅で調理して持ってゆきました。実際に様子をお聞きしてみますと、食欲は無いし、熱はあるしと容体が変化していました。わざわざ持って来てくれたものだからと気を使われたのか、召し上がってらっしゃいましたが、うかつな事をしたものだとその方にも押し分けなく思いました。食べにくい物ばかりだったのです。加えて調理して時間のたった物を、冷蔵庫で冷やすでもなく、温め直すでもなく渡したのですから、衛生上でも適温供食の面からも問題ありました。今回、下痢の時の食事を取り上げましたが、PWAの食事を用意する際、当日の体調、食欲の有無、食べたい物等を確認して調理し、個々の料理を通温で提供できるようなPWAに隣接したバディの必要性を痛感しました。

余 談

昔、むかし、私がまだ学生だったころ(10年以上前だ。ひぇー)バイトでホカ弁屋さんやコンビニのお弁当を買いあさり、その中の細菌数を調べるというのをやったことがあります。ホカ弁屋さんのお弁当は皆、OKでした。が、コンビニやスーパーのお弁当は食中毒を起こしてもおかしくない位、細菌がウヨウヨしているものもあってビックリ。特にマヨネーズものと卵焼きがひどかった、と記憶しております。マヨネーズって生卵を使っているし、卵焼きはあのあいまいな火の通し方が美味なのだけれど…。最近では業者側の設備も整っているし、現在もそんな状態だなんて思いたくないけれど、これから食中毒の多くなる季節、皆さん気をつけましょうネ。

付記:アイソトニック飲料

乳児用アイソトニック飲料とその他のものとの成分の違い。 K+(カリウム)は細胞内液に存在し、浸透圧やpHの調節等に関係していますが、日常の食事で不足することはないので大人用(?)には少ないのかも知れません。逆に乳児は野菜等を多く摂取しきれないので多めなのではないでしょうか。でも、これは憶測なので…。どなたか詳しい方、教えてください。

    森永乳業
アクアサーナ
大塚製薬
ポカリスエット
キリンビバレッジ
ポストウォーター
Na+  25mEq/l  21mEq/l  0 mEq/l
K+  20mEq/l  5mEq/l  不 明
C1+  20mEq/l  16.5mEq/l  不 明
カロリー  16Kcal/100g  24Kcal/100g  16Kcal/100g
備考    アミノ酸=化学調味料含有   


■参考文献


参考メニュー

-ブラマンジュ〜イギリス風〜

  1. コーンスターチ /50g 
  2. さとう     /60g 
  3. 牛乳      /600? 
  4. バニラエッセンス/少々
  5. あんずジャム  /適量
  6. 水       /適量
  7. ブランデー   /少々
  1. コーンスターチとさとうを合わせて入るう。分量中の牛乳から大さじ2〜3とって加え、溶く。
  2. 残りの牛乳を鍋に入れ、さとうが溶ける位に温めてAに一気に加え、泡立て器でよく混ぜる。
  3. 鍋に戻して中火にかけ、木ベラでゆっくりと混ぜながら沸騰させる。次に弱火にして2〜3分、焦がさないように煮る。
  4. 火から降ろし、エッセンスを加え混ぜ、円側を水でぬらした型に、熱いうちに流し入れる。放熱がとれたら冷蔵庫で冷やし固める。
  5. 鍋にあんずジャムを適量入れ、同量位の水を加えよく混ぜ冷ます。
  6. ブラマンジュを型から抜き、ソースをかけてできあがり。

コンソメゼリー

  1. 鶏ささみ     /2本
  2. 日本酒      /適量
  3. 塩        /少々
  4. 粉ゼラチン    /10g 
  5. 水        /100?・・・水にゼラチンをふり入れ、よく混ぜてふやかす。
  6. 水        /350? 
  7. コンソメスープの素/適量
  8. サラダ菜
  1. 鶏ささみを耐熱性の皿に乗せて、塩をふりラップをして電子レンジでチンする。細かく指でさく。冷ましておく。☆しすぎるとガビガビになりますので注意。
  2. ふやかしたゼラチンを、火から降ろした熱いスープに入れ、よく混ぜて溶かす。鍋の底冷水に当ててゼラチン液を冷ます。冷水は通 とりかえる。
  3. 内側を水でぬらしたプリニカップ位の容器に、鶏ささみを入れ、冷えてトロミのつきかけたゼラチン液を口いっぱいまで流し入れる。冷蔵庫で冷やし固める。
  4. 型を一瞬、湯につけてゼリーを、サラダ菜をしいた器にぬく。

チーズワンタンスープ

(口内炎の時)

[A]

  1. 鶏ひき肉   /適量
  2. パン粉    /適量
  3. 牛乳     /適量・・・パン粉と牛乳に浸して湿らせる
  4. 生姜汁    /少々

[B]

  1. プロセスチーズ/適量・・・包みやすいように細かく刻む
  2. ワンタンの皮 /適量
  3. 水      /適量
  4. 人参     /適量・・・薄切り
  5. 玉ねぎ    /適量
  6. スープの素  /適量・・・洋風、中華風どちらでも
  1. [A]を混ぜ、よく練る。
  2. ワンタンの皮でA、Bを別々に包む。
  3. 鍋に水を入れ、野菜を柔らかくなるまで煮る。
  4. 包んだワンタンを煮立っているスープに1つずつ落とし入れ、皮が透き通ってきたらスープのもで味つけする。

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