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■『龍平の未来 エイズと闘う19歳』
  広河隆一・川田悦子著 講談社刊 \1,500

 本書は、東京HIV訴訟の原告である川田龍平君の日常の姿を、フォト・ジャーナリストの広河隆一氏が写真におさめたものです。同時に、龍平君のお母さんである悦子さんが、当事者の視点から薬害エイズについて語り掛けたものにもなっています。
 川田悦子さんは冒頭に「龍平は、あなたのすぐそばにいる少年たちの一人です」と書いています。その通り、本書には、どこにでもいる普通の青年の姿が映し出されているのです。でも、唯一違うのは、彼は薬害エイズの被害者であるという点です。そして、1千人以上の子供たちが薬害エイズの被害を受けていることを考えると、本書に描かれているのは龍平君一個人ではなく、被害にあった千人以上の子供たちの姿であることに気づかされるのです。

 龍平君は、単にHIV感染者だから顔と名前を公表したのではないと言います。彼が訴えたいのは差別や偏見ではなく、薬害エイズを(加害者たちを)告発するために名乗り出たのです。そのため本書では、お母さんの平易な言葉で語り掛けるように、薬害エイズについて解説されているのです。
 薬害エイズの被害者としては、赤瀬さん、石田さん、草伏さんが、それぞれ手記を書いてきました。が、いずれも年配者であることもあって、薬害エイズの前に血友病患者としての半生が描かれています。もちろん、薬害エイズの多くは、血友病というハンデをしょった方々の被害であることは確かです。しかし、血友病という病気と、薬害エイズとは別個の話です。にもかかわらず、今まで「あっ、薬害エイズって血友病という難病患者の話ね」という印象をもたれてきてしまったのです。
 龍平君も血友病患者ではありますが、日本の医療体制が整備され、血友病が何ら重篤な病気ではなくなって以降に生まれた青年です。そのため、普通の青年とは変わらない生活を送っているのです。けれども、その生い立ちは、エイズ予防法案をめぐる動きなど、まさに薬害エイズとともに歩んできた歴史です。そこに描かれているのは、血友病という難病患者の姿ではなく、薬害エイズに翻弄されてきた話そのものなのです。

 最後に、川田悦子さんからのメッセージを御紹介します。「今、龍平の周りで子供たちが次々と発病して亡くなっています。5日に一人の割合で、既に316人以上の血友病患者が亡くなっているのです。私は、龍平の母親としてだけでなく、日本に生きる一人の大人として、この犯罪とも言える厚生省・製薬企業の責任を問わずにはおられません。被告らは、子供たちに謝るべきです。子供たちが生きているうちに、一日も早い解決を願っています。是非、この薬害エイズ訴訟に支援をお願いします。」

[草田 央]

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■『薬害エイズ原告からの手紙』
 東京HIV訴訟原告団著 三省堂刊 \1,500

 エイズというのは疾病の一つでしかありません。それゆえ、エイズ患者の手記にしても話にしても、それはその人固有の人生であり、その人の考えであり、必ずしも他のエイズ患者に当てはまるものではないのです。「エイズ患者」という人が最初から存在していたわけではなく、たまたまその人がエイズという疾病を持ったに過ぎないと考えてください。したがって、特定のエイズ患者に肩入れしてしまったり、ヒーロー化してしまうことは、エイズというものを知ったつもりにはなれても、エイズの全体像からは遠くかけ離れてしまう危険性を持っていると言えるでしょう。
 本書は、東京HIV薬害訴訟の原告・60家族70通の手紙を集めています。家族も含め、こうした当事者の声が複数集められた本というのは初めてのことです。一つ一つの手記は、過去に出されてきた手記と同様、その人固有の声に過ぎません。しかし、それが70人もの声になれば、それはもはや普遍化されたものとなるのです。あなたが本書から受ける印象は、特定の誰かの人生ではなく、被害実態の全体像そのものであるはずです。
 そして、本書に掲載されたのが、薬害エイズの被害者であることにも、嫌でも気づかされます。このような被害をもたらしたのは、巻頭の被告目録に掲載された・国と製薬企業です。手記を読み終わったら、ぜひこの巻頭に戻って、原告らの怒りを共感してください。
 日本のエイズは薬害から始まり、今でも患者・感染者の半数を占めています。しかし、厚生省らによって隠蔽され、また被害者たちも差別・偏見を怖れてひっそりを身を潜めてきました。裁判の原告尋問にしても、そのほとんどは非公開で行なわれたのです。そのため、その被害実態は、断片的にしか聞こえてきませんでした。本書が、その被害実態の全体像を知ることのできる初めての機会となりました。
 掲載された手記は、あまりに凄絶です。明るく楽しいエイズキャンペーンに慣れ親しんでいた人たちには、目を逸らしたくなるかもしれません。しかし、これこそが、満足な医療体制も整わず、一片の謝罪の言葉すら発せられてこなかった、日本の“現実”なのです。「本書を読まずして日本のエイズを語るな!」と言わせてください。エイズに少しでもかかわろうというのなら、この被害者たちの訴えを避けて通ってはならない、必読書と言えるでしょう。

[草田 央]

・原告からのメッセージ
 東京HIV訴訟の原告自身みんなが力を合わせて、このたび初めて『薬害エイズ原告からの手紙』と題する本を出版しました。
 原告のおよそ3分の1は亡くなっているという悲惨な被害の中から、91原告中なんと約60家族から原稿が、本書編集部に寄せられました。被害者原告らは、これまで加害者に虐げられ、社会のエイズへの偏見差別に身を小さくして、声を上げられなかったことを考えれば、何か一言でも伝えたかったのでしょう。たくさんの原稿が集まりました。
 原告が執筆した原稿は全て、手紙形式です。すべての手紙は基本的に“〜さんへ”というふうになっています(“〜さんへ”となっていないものは「読者の皆さんへ」ないしは「自分自身へ」と解してください)。
 息子や娘に宛てた手紙。親に宛てた手紙。友人に宛てた手紙。被告(厚生省や製薬企業)に宛てた手紙。加害医師に宛てた手紙。妻に宛てた手紙。夫に宛てた手紙。兄弟に宛てた手紙。などなど。一人の被害が決して二千分の一の被害に相当するものではありません。薬害エイズ被害者たちの真実の声が聞こえてきます。
 薬害エイズの本質、核心、独自性が、この本におきまして、鮮明に打ちだされたと思います。ぜひ、この私たちの本を読んでください。
 追伸・本書には手紙用紙(切手不要)が同封されています。皆さまから、私たち原告へ、お手紙をいただけましたら幸いです。特定の原告宛てでも、原告全体宛てでもけっこうです。

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■『手でふれて心でふれて
         〜エイズと共に〜』
  バキーノ林子著 カタツムリ社刊 \1,030

 LAPでもマッサージの勉強会に講師としてお招きしたバキーノさんの著書です。九三年に全国九カ所で行なわれたワークショップを覚えている方も多いと思います。
 この病気と関わり、具体的・直接的なケアーをしたいと思っている方へのガイドブックともいえる内容になっている本書はマッサージはもちろん、心と体のコミュニケーションについても述べられています。
 注文は書店から「地方小出版流通センター扱い」で取り寄せるか、直接カタツムリ社(TEL022-213-6739)まで。

[YO]


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