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突然! T-GAPのページです 第6回

志麻みなみ 

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 こんにちは。T-GAPです。クリスマス・お正月と続いたホリディ・シーズンはいかがでしたか? 素敵な時間を過ごすことができました?
 私は海外に出たり、地方から見えたTGの方たちとお会いしたりで、個人的にはとても忙しかったです。そういうわけで、今回のT-GAPのページは海外からのご報告です。

海外視察報告[1]

- 昨年12月にアメリカ、イギリスへ海外のトランスジェンダー(TG)をめぐる状況を視てきました。今回から何回かに分けてご報告します。

 まず今回はアメリカ、シアトルのお話しです。シアトルベースで活動しているのは、知る人ぞ知るインガーソルセンター。ダウンタウンから少し離れたところに事務所を構えているこの団体は、もう長いことトランスジェンダーに関する活動をしていることで有名です。その活動内容は、毎週数回TS/TG対象のセッションを行っていたり、また家族の参加を促すなど、質、量ともに層の厚さを感じさせるものでした。セイファーセックスを促すリーフレットなども事務所のパンフレットコーナーでみられました。
 今回私が参加したのは、TG一般を対象としたミーティング。だれでも参加できるその会合には、数人のTGたちとジェネテックの女性が和やかな雰囲気のなかで、自分のこと、仕事のこと、もちろんTGの問題や考えをいろいろとシェアしていました。ある方は「センターを知る前は、こんな人間は自分一人だけだと思っていたけれど、そうではないとわかってとても安心したんです」と話してくれました。こんな小さなことでも、明らかにセンターは誰かのためになっているんだな、と感じさせてくれたお話しです。
 現在、このセンターで力を入れている問題は家族と仕事のこと。TGはとかく「全人格的」な問題を抱えていると考えがちですが、この2つのことさえ解決したなら、状態はとてもよくなるという認識にたっているものです。これはアメリカ精神医学会が示しているスタンスとも共通するもの。そこでこのセンターでは、数々のサポートプログラムをTG当事者だけではなく、家族やパートナーとともに行うことを進めています。

 シアトルでひとつ特徴的なことは、どういうわけか就職の状況がアメリカのほかの地域と比べて格段にいいことです。普通、TGが風俗産業/お水商売以外の職業につくことは、世界各国地域をとわずそれなりの困難が伴いがちです。ところがシアトルではTGであることが特に問題にはならないようなのです! もちろん、その人の資質、適性は当然問われるわけですが、TGであるということは致命的なハンディキャップにはなりません。お話をお伺いしたセンターの担当者の方も、カムアウトしながらきちんとしたお仕事についてらっしゃいました。どうしてこのような状況が生まれてきたのでしょう? もともと人と人との違いを大切にする土地柄であったり、はたまた「変わっている」ことを個性としてよしとする先端産業が集まっていたり…とにかく明確な理由はありませんが、雇用の状況はとてもいいということでした。

 もちろん問題がないわけではありません。たとえば現在、世界的にも有名な地元企業とあるTGの間では雇用条件をめぐってある訴訟が起きているそうです。それは職場のドレスコード(服装規定)に関するもので、性転換手術を受ける前には染色体の性別の服装規定に遵わないといけないという問題でした。そのTGは現在トランジット中で、その間も本来の性での服装を認めてほしいという訴えを出しています。このお話しを聞いて、私は驚かずにはいられませんでした。TGであることなどはもう問題ではなく、明らかに次のステップに話が進んでいるからです。それにたいして日本の状況は…ここに書くまでもありませんね。
 次回はイギリスでのお話しをお伝えしたいと思います。

■情報不足解消のために翻訳プロジェクト始動

 T-GAPの翻訳プロジェクトからのお知らせです。
 自分のアイデンティティ、またTGをめぐる諸問題や健康エイズのことを考えようとしても、なかなか「これ!」という情報にアクセスしにくいのが日本の現実。その点充分とは言えないものの、海外ではいくつかの本やリーフレットなどが発行されています。でも書かれている言葉はもちろん外国語。そこでそんなみなさんのお役立ちになりましょ、というのがこの翻訳プロジェクトの趣旨です。アメリカのみならずヨーロッパから、TGのためになりそうなものをピックアップ。それをどんどん訳して形にしていこうということなのです。
 その内容はTGの問題にふさわしく、たとえばTGとセイファー・セックス、ホルモン・ガイダンス、またトランスジェンダリズム一般にかんするものなど、多岐に渡ったものにできればと思います。

 そこで、翻訳できる方を募集します! もちろんボランティアベースということになりますが、その翻訳の作業を通じて得られることも多いはず。なるべくでしたらTG当事者の参加を歓迎しますが、必ずしもそれにはこだわりません。TGに強い関心をお持ちの方の参加も歓迎します。言葉は当面英語から日本語になると思いますが、そのうちフランス語などの需要もでてくるでしょう。
 詳しいことは、T-GAPまでご連絡ください。おりかえし詳しいことをお知らせいたします。

(T-GAPコーディネーター 志麻みなみ)

※T-GAPは現在活動を停止中です。


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