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HIVエイズ基礎知識講座3


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感染予防には、コンドームが一番


前回は、エイズはとてもうつりにくいということを学びました。そして、さらにHIVがどうやってうつるかということも見てみました。

今回は、「それじゃあ予防はどうしたらいいのか」ということと、「HIVがうつりにくいのに、HIVに感染している人がこんなに多いのはなぜ?」ということをみていきましょう。

エイズの予防は簡単です

・コンドームを使うことが一番の予防

HIVの感染経路にはいくつかのものがありましたが、わたしたちに最も関係の深い感染経路は性交渉でしょう。

性交渉での予防はたったひとこと「コンドームを使いましょう」。とてもシンプルです。でも、せっかく使っても、正しく使わなくては意味がありません。もう一度、使い方を確認しましょう。

・コンドームははじめから?

コンド−ムは、膣性交でもアナルセックス(肛門性交)でもオ−ラルセックス(口腔性交)でも、はじめから射精するまで使うと効果的です。

でも、これは<効果的だ>ということで、絶対はじめから最後までつけていなくてはならない、というのとはちょっと違います。

絶対はじめから最後までつけていなくてはならない!となると、途中で気がついて「あ、やべやべつけなきゃ。でももう途中で手遅れだから、まいっか」ってことになってしまいます。はじめから最後までつけていられるのが理想的ですが、途中で気がついたら、そのときからでもつけるようにしましょう。あるいは「つけて」と言うようにしましょう。あるいは無理やりつけてしまいましょう。

それに挿入したら射精までそのまま挿入しっぱなし、ってことはないでしょう(そういうこともあるでしょうが)。挿入してピストン運動して一時休憩して抜いてペッティングしてまた挿入してピストン運動してまた抜いてペッティングしてまた挿入して・・・そしてやっと射精ってことも多いと思います。その時は一回一回コンドームをつけ直すのが面倒なので、まあいいかと思ってしまうこともあるでしょう。

でも、これはコンドームがふにゃふにゃになってしまっていて漏れる危険性がとても高くなります。本当は抜いたら一回一回コンドームを付け替えるのが理想的なのですが、そうなると一回の射精までに数個のコンドームが必要になってしまって、金銭的余裕がない人にはきつくなります。

となると方法は二つです。

一度入れたら射精するまで抜かないか、射精する最後の回にコンドームを使うかです。

後者は途中で漏れたり膣分泌液に触れたりと危険性はありますが、どちらを選択するかは二人で決めるといいでしょう。そこまで他の人が口を出すべきではないと思います。

相手がHIV感染者の場合
性行為1回あたりの相対的な感染危険性
性行為の種類
相対的危険度
挿入側のフェラチオ
1
受け側のフェラチオ
2
挿入側の膣性交
10
受け側の膣性交
20
挿入側の肛門性交
13
受け側の肛門性交
100
コンドームの使用あり
1
コンドームの使用なし
20
注)この表は性行為とコンドームに関する個人の選択の影響を比較するのに役立つようにHIV感染の相対リスクを数量化したものである。
例)肛門性交の受け側でコンドームを使用しなかった場合、危険度は100×20=2000倍になる。
『HIV検査について−HIV感染リスクを伝えて検査を勧める医療者のためのガイドブックVer.2』(発行:中四国エイズセンター、2004年11月)より
出典:MMWR 2003:52(No.RR-12)

・コンド−ムは正しくつけましょう

コンドーム使用上のもう一つの問題はコンドームの破損です。コンド−ムの破損は、若い人ほど多いようです。

コンド−ムが破れる原因の多くは、正しい使い方をしなかったためです。特に次のことに注意をしましょう。

(1)開ける時に爪や歯で傷つけない
(2)表・裏を間違えない
(3)新しいコンド−ムを使う
(4)射精をしたら根元をもって、すみやかに抜く

[関連項目]コンドーム付け方講座(LAPニュースレター12号より)

・コンドームをつけるのを楽しみに

ある女性から「男の人がコンドームをつけるのを見ると笑っちゃうの」という話を聞いたことがあります。確かに、それまで盛り上がっていた雰囲気があの一連の作業で中断されますね。それに冷静に見てみるとちょっとこっけいな図ではあります。

だからこそ、その雰囲気をこわなさいコンドームの付け方を二人で考えるといいでしょう。普段から練習を積んで流れるようにつけられるようにするっていうのもいいでしょう。二人でいろいろしながらつけて、二人の間のエッチ度をさらにあげるのもいいでしょう。口でつけたり、エッチな会話をしながらつけるのもいいですね。

カップルで想像力を働かせていろいろな方法を考えて下さい。素敵な方法が見つかったらLAPに教えて下さい。

大事なことはコンドームをつけることを「面倒くさい」から「楽しい」あるいは「快感」に変えることです。「コンドームはつけなければならない」という観点でコンドームをつけても、すぐにあきてしまいます。

・危険な人とは性交渉をもたないのが一番では?

よく、自分は安全な人としかセックスをしないから大丈夫だよ、ということを聞きます。

このような人こそ要注意です。

HIVに感染した女性のほとんどが夫やステディな恋人からうつされたというアメリカの調査があります。日本ではそういった調査はちゃんとされていないのでわかりませんが、少なくとも風俗の人だから危険だとか、素人さんだから安心だとかいうのはないのです。

ベルリンの国際会議で売春を職業にしているアムステルダムの女性が「自分はプロだから、HIVをうつしたりうつされたりしない」と言ってました。HIVは性交渉を通じて感染します。これは、誰でも感染する可能性があるということです。ウィルスは人を選びません。100人の人とコンドームを使って性交渉を持った場合と、5人の人とコンドームを使わずに性交渉をもった場合とでは、HIV感染の危険性から言ったら後者の方が高いのです。

安全だと思う気持ちが一番危険なんです(って何か警視庁の標語のようになってしまいましたが)。 安全だと思う人でもコンドームを使うようにしましょう。そして危険だと思う人とでもコンドームを使えば大丈夫なのです(なんてコト書いちゃっていいのかな?)。

・あなたはつける人?

エイズに限らず性的感染症に関しては、現在や過去の性的なパートナーが影響を持つだけではなく、そのパートナーの現在・過去の性的パ−トナ−、またその相手のパートナー、またその相手の…という風に見えない多くの人たちが影響を持ってきます。これを気にしていくと気が遠くなってしまい、ほとんど何もできなくなってしまいます。

ですから、これから性交渉をもとうとする相手に、今までのセックスの相手のことを尋ねることはあまり意味がありません。それよりは、その人が普段からコンド−ムを使う人かどうかを聞いた方がまだ現実的です。

「あなたはつける人?」「あなたは使う人?」という質問をするようにしましょう。

でも、あなた自身はつける人?

なのにセックスで感染する人がこんなに多いのはなぜ?

HIVはこんなに弱く、しかも予防方法もはっきりしているのに、たくさんの人が性交渉で感染します。これははなぜなのでしょう。

[1]100回のセックスなんて簡単

HIVをもっている人との1回の性交渉で感染する確率は、0.1%〜1.0%と言われています。100回〜1,000回に1回です。しかし、100回という回数は性行為に関して言えば、案外簡単にクリアしてしまうものです。

過去5年以内に輸血を受けた人は成人では5%程度と推定されていますが、同じ5年以内に100回以上セックスをした人は、おそらくもっと多いでしょう。かりに3日に1回セックスをしても1年もたたずにクリアしてしまうのです。

[2]エイズはやっぱり他人ごと

はじめの情報のあやまりから、「エイズは特別な人たちの病気だ」と思い込んでいる人がまだかなりいます。欧米でも、最初は男性の病気だと思われていたために、女性の間にあっという間に広まってしまいました。今の日本では、風俗関係の外国人女性か男性同性愛者の病気だと思っている人が多いので、それ以外の人に広まる可能性があります。それ以外の人、あるいはその人たちと関係を持った以外の人はほとんどが検査に行かないので、潜在化してしまうのです。

[3]理性的なセックス?

今では多くの人が、コンド−ムがエイズの予防に効果があることを<知識>として知っています。しかし、いくら正しい知識があっても、それが行動に結びつかなければ予防はできないのです。知識を司る理性はセックスの時には弱くなっていることが多く、またそれが普通です。ですから、予防は知識としてではなく、習慣として身についている必要があります。


<コラム>
『エイズの世界へようこそ』のはなし

エイズに関連する噂の一つにエイズの世界へようこそ。というのがある。

一人の男性が、バ−で飲んでいると隣にとても魅力的な女性が一人で飲んでいた。彼は彼女をくどき、一夜をともにした。あくる朝、彼が目をさますと彼女の姿は消えていて、鏡にル−ジュで「エイズの世界へようこそ」と書いてあった、というものだ。

こういう、一見ありそうな(でも、本当はほとんどなさそうな)噂話というのは、とても歓迎される。退屈な日常に一瞬のきらめきを提供してくれるスパイスになるからだ。

しかし、この話に登場してくるような人たちは、こういった噂話の伝達者には決してならない。黙っていても口説かれてしまうような魅力的な女性も、その女性を簡単に口説けてしまうような男性も、ともにこんな噂話というスパイスがなくても、充分きらめいているからだ。この話をまことしやかに伝えるのは、この話とはあまり縁がなく、でもいつかはそういった冒険をしてみたいと思っている人たちなのだ。

だから、この手の話を聞いたとき、エイズの知識をひけらかして「う−ん、この男性が感染した確率は0・1%〜1%だから、まあほとんど大丈夫だろうね」などと言ってはいけない。それでは話し手の夢を壊してしまうというものだ。相手から「私の知り合いの知り合いから直接聞いたから本当なのよ」とか「じゃあ、絶対大丈夫だっていう証明をしてみろよ」とか言われて、あなたが嫌われるか、陰であなたが疑われるかが落ちだ。


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