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HIVワークショップ[1]
エイズ101報告

清水茂徳 

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 6月の25日に「HIVワークショップ」を行ないました。その簡単の報告です。
 このワークショップはサンフランシスコのGCHP(ジーチップ/GAPA COMMUNITY HIB PRJECT)というグループのスタッフやピア・カウンセラー向けに行なわれているスキルに若干、改良を加えたものです(今回は初歩の「エイズ101」を行ないました)。
 ファシリテーターはサンフランシスコ在住の鬼塚氏にお願いしました。鬼塚氏はJAAP(JAPANESE AMERICAN AIDS PROJECT)というグループ(詳しくは92年のニューズウィーク日本版別冊エイズ特集号P72〜73参照)でこのワークショップを行なっている方です。
 鬼塚氏は「サンフランシスコで行なわれている活動を紹介することによって日本での様々な活動が少しでも進展すれば」と今回のファシリテーターを引き受けて下さいました。
 また、今回は実験的な試みでもあったために10名程度の少人数で行いました(少人数の方が効果が出やすいという鬼塚氏の希望もありました)。時間はおよそ3時間。レクチャーはわりと少なめで、グループセッション中心の構成でした。
 全体の流れは次の通りです。

[全体の構成]

 ただ、鬼塚氏も状況を見ながら内容を調整していましたので必ずしもこれが「標準」というわけでもありません。
 まず、このワークショップはエイズに関する基本的知識を学ぶことと、それをどの様に使っていくか、が目的である。そのための最初のワークショップがこの「101」である、と説明がありました。
 そして、3つのグランドルールが提示され、参加者の同意が得られた後、自己紹介に入りました。

  1. 他人の意見を最後まで聞く、絶対に口をはさまない
  2. 他人の意見に批判的にならない(ジャッジメンタルにならない)  (その人は正しいと思ってその意見・知識を持っている。頭ごなしに「それは違う」といってしまうと相手はディフェンスにまわってしまう)
  3. 他人の個人的なことは外に出さない

 一人2、3分の自己紹介の後、アメリカの近況として、エイズ患者報告数(累計)と死亡者数、その年次グラフが報告されました。

 また、82年に1千件だった報告数が10年後の92年に25万件になったこと、84年から85年にかけて「感染爆発」が起こったこと、現在でも報告数の伸率は鈍化しているが、上昇していること、が指摘されました。
 続いての「感染経路の解説とディスカッション」は

  1. 感染は「体液の交換によって起こる可能性が出てくる」という解説
  2. 「体液」のブレスト
    (血液、精液、膣分泌液、唾液、尿、汗、プリカム[男性の潤滑液、いわゆる「先走り」]
  3. 「体液」カードの分類

 各グループに1セットの「体液カード」が配られ、それを分類しました。分類する際には「自分の感覚的な気持ち」も大事にするように述べられました。
 今回は「まったく安全」(尿、鼻汁、汗、涙)「感染の可能性が高い」(血液、精液、膣分泌液)「それほど可能性があるわけではないが、まったくないとも言い難い」(母乳、プリカム、唾液)というように分類されました。その後、鬼塚氏のコメントがありました。

  1. 解説とディスカッション(HIVとは何なのか、エイズとは何なのか)

という流れで行われました。いくつか補足しますと、

 この最後の「ウィルスが発見される以前に出来た言葉」という指摘はすごく重要だと思います。ウィルスという原因が特定される前の、観覧や恐怖などといった背景を持った言葉である、というワケなんですね。
 マスコミでよく使われる「エイズ・ウィルス」という表現は一般的意味論的にいえば、その「混乱や恐怖」とHIVを結び付けてしまう可能性のある表現であるといえ、また、HIV-2を「新型エイズウィルス」(読売)「新型エイズ」(共同)といってしまえる見識の浅さには愕然とさせられます(「新型」と「日本初」では表現の範囲が著しく異なります。また検出されたのはウィルスであり「エイズ」ではありません!)、というのはワークショップを終わってからの僕の個人的な意見です。
 また、この実習が「身近な論点」(体液の交換といった簡単な説明、と体液の分類)から「医学的な論点」(HIVや免疫機構の解説)という順番で構成されているのは興味深いところです。「医学的な論点」から入ったのでは寝てしまう人もいるかもしれません。実際に即した構成になっているにはサンフランシスコの「25人に一人がHIV感染者」だからなのでしょうか。
 これに限らず、「前提」や「出発点」が日本でよく行なわれている講習と違うところがいくつか見受けられます。この違いこそがひょっとしたら日本でよく行なわれている講習の限界なのかも知れないな、と感じました。


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