94年6月12日(日)、下北沢は女性センター「らぷらす」にて、LAP主催の「平田さんを偲ぶ会」が行われました。
当日は雨にもかかわらず、23名もの方がいらしてくださいました。会場には、差し入れのお菓子やお料理、そして、遠方で来られなかった方からのお花や電報が届けられ、生前の平田さんがいかに皆に慕われていたかを物語っているかのようでした。エッセイや短歌に囲まれて
会場にはエイズ・サポート千葉の協力で、平田さんのエッセイや直筆の短歌も飾られました。偲ぶ会とは言うものの、そうしたものに囲まれて、なごやかな雰囲気の中で会は進められました。
初めにラップお得意のファーストネーム自己紹介(普通の自己紹介とは変わって、呼ばれたい名前で自己紹介をするというものです。一人一人のプライバシーを重視する中で生まれました)から始まって、LAP代表の清水から、平田さんの紹介と今までの経過についての報告がありました。途中、休憩をはさんで、実際に最後の一年間、平田さんのバデイとして、また、平田さんが代表を勤めていたエイズ・サポート千葉の事務局長として活動されている平田さん(紛らわしいので私たちは小平田さんと呼んでいます)の方から、3月末から入院されていた平田さんの様子についてお話しがありました。3月末から入院されていた平田さん
平田さんは昨年秋にサイトメガロウイルスによる網膜炎から両眼を失明し、その後は千葉の方で生活をしていましたが、この3月末から高熱が続くようになり、通院が不可能ということで入院されました。初めは5月の連休明けには退院する予定でいたそうなのですが、肺炎による高熱がなかなか下がりませんでした。いろいろな治療を続けていたのですが、平田さんの身体はそういった状況に耐えられる状態ではなかったのでしょう。結局、最終的には呼吸不全を起こし、5月29日午前5時13分に亡くなりました。
いつも平田さんは、相部屋に入院していたのですが、悪くなってからは個室に入っていました。そのころにちょうど、隣の部屋の人が亡くなったことがきっかけとなって、夜、一人でいることをとても怖がるようになり、エイズ・サポート千葉の人達はシフトを組んで、夜、平田さんの病室に泊り込むようになりました。その中には身内の方も含まれており、また、バデイの方も平田さんにとって本当に気のおけない間柄の方ばかりだったようです。最後はそうした人達に囲まれての死だったわけですが、これは死に方としては良かったのではないかとそういうお話しも出ました。
また、平田さんらしく、最後までユーモアを忘れず、病床でも調子のいいときは冗談が飛び交っていたそうです。参加者の方からのお話
その後、参加者の方から自由に思うことなどをお話ししていただきました。そこでは、平田さんが感染者として名乗りを上げたことについての意義、平田さんの死についての報道、また、今後のボランテイアの在り方や方向性等についての意見が目立ちました。
今回の平田さんに関する報道では、「エイズ死」「生き地獄」等の言葉が使われていましたが、これは本当にエイズに特有の苦しみなのか、または意図的に、或いは無意識に社会が作り上げているものなのか、という意見が出ていました。これに対しては、どんな病気であっても最期は決して楽な場合ばかりではない。それはエイズだからというものでもない。平田さんは最後、自分の愛する人たちに囲まれて亡くなっていった。それはむしろ、死に方としては幸せなものなのではないか?それに平田さんは、彼と出会ったら最後、今までのエイズに対するイメージを「ふふん」と鼻で笑わせてしまうような、そんなパワフルでポジテイヴな生き方をした人だった。平田さんのああいった生き方や姿勢は、多くの人に勇気を与えたし、また、エイズに対するネガテイヴなイメージを、ほんの少しではあるかもしれないが、変えることができたのではないかと思う。エイズは決して暗いものではないし、なったら最後、終というものでもない。平田さんがそれを体現したように、私たちもそのことを伝えていきたい。皆さんから出た意見をまとめると、こんな感じでしょうか。途中、平田さんならではの面白おかしい思い出話しなんかも出たりして、会場は追悼集会だというのに、暗さや湿っぽさは微塵もなく、終始、暖かいムードに包まれていました。それはまるで、平田さんがそこにいるかのようでした。「明るく、楽しく」
そして、二次会はラップお得意のカラオケで、陽気に平田さんを送りました。最後の最後まで、「明るく、楽しく」をつらぬいた平田さんを送るには、最もふさわしいものだったように思います。世間一般でいう追悼集会とは、およそかけ離れたものとなりましたが、終わってから、胸の中をさわやかな風が吹き抜けていくような、そんな感を抱かせてくれた集まりでした。今回の集まりにご協力くださいました皆さんに、深く感謝致します。
そして、平田さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。