東京都衛生局が主催している「エイズボランティア講習会」が94年10月6日から計4日間の日程で行われました。これは毎年、東京都が開催しているもので、今年で3回目です。
講座は全部で8つありました。
◆10月6日
「世界から見た日本の役割〜国際エイズ会議を終えて〜」
国立医療情報センターAIDS医療情報室長 桜井賢樹氏
「ボランティア論」
エイズ予防財団 森田眞子氏
◆10月14日
「エイズの病態と合併症」
東京大学医科学研究所感染症研究部助手 岡慎一氏
「エイズのウイルス学とその検査法」
国立予防衛生研究所エイズ研究センターエイズ検査室長 吉原なみ子氏
◆10月15日
「カウンセリングマインドとエイズカウンセリング」
「事例紹介・カウンセリング実習」
八王子少年鑑別所鑑別部門法務技官 小島賢一氏
◆10月21日
「PWA/Hと栄養」
都立駒込病院栄養科管理栄養士 小松美佐子氏
「エイズと看護」
都立駒込病院看護部主任看護婦 柴野恭子氏この講座には僕も縁があって、毎年参加しています。各ボランティア団体に通知がきて、団体毎に申し込むようになっているので、一般への告知はしていないようです。僕たちLAPとしては「準備も、気遣いも、お金もかからず勉強できる」ということで、大変助かっています。また、来年度も開催されるようですので興味のある方はぜひご一緒に。
さて、今回はその中から岡慎一氏「エイズの病態と合併症」と吉原なみ子氏「エイズのウイルス学とその検査法」の講座の印象的だったトピックスをいくつかご紹介します。
すでに、ご存じの方もいらっしゃるとは思うのですが、僕には大変勉強になる講座でした。僕のメモをもとにしていますので、間違いがありましたらごめんなさい。また、質問やご意見などがありましたらお知らせください。・感染から発症までは今は平均13年といわれている。
・カポジ肉腫はインターフェロンでコントロールできる。また、口の中では上顎の硬いところに出来やすいので、患者の口を診るときは下から上を覗き上げてみる必要がある。
・カンジダはジフルカンという薬を一日一錠飲めばすぐ直る。だから、CD4がある程度下がった患者は手元にジフーガンをストックしておいて、カンジダが出たら飲むようにするといい。そうすれば、(カンジダが出たからといって)わざわざ病院に行く手間も省ける。
・口内炎には他のウイルス疾患が否定されればステロイドホルモンが有効。
・肛門ヘルペスを痔と間違えて、ステロイドホルモンを投与すると抵抗力が落ちるので悪化することがある。
・サイトメガロウイルス網膜炎が出てきたら、2週間、ガンシクロビルを点滴する。その後も再発を防ぐために週5回の点滴が必要。しかし、ガンシクロビルの眼注(眼の硝子体内への注射)なら一週間に一度で再発を防げる。なので、外来でも治療が可能。外来で1年半通っている人もいる。
・トキソプラズマは頭痛、熱などの症状がでるが、2週間できれいに治療できる。が、診断が難しい。区別が難しい悪性リンパ腫との違いは進行のスピードで、トキソプラズマは「週単位」、悪性リンパ腫は「月単位」。(なので診断がつく前にまずトキソプラズマの治療をして、薬が効けばトキソプラズマ、効かなければ悪性リンパ腫など他の病気と考えるそうです。「診断のための治療」といわれ、患者のQOL[生活の質]を維持するために日和見感染症の治療ではわりと行われているようです)
・外来ケアでは10年以上の期間で予後を考える。
・ddCはまもなく認可の見通し。値段はddIと同じぐらいになるのではないか。ddCはddIと似ている薬だが、ddCの方が飲みやすい。ddIは粉のは甘ったるく、錠剤はなかなか噛み砕けない。
・CD4が200以上では「一般的な感染症」への対応が中心。CD4が200以下(特に100以下)では「日和見感染症」(一般の医者があまり診たことのない感染症)が中心になってくる。
・AZTは量が多ければいいものでもない。患者の中には「今回はCD4が減っていたから倍の量飲もう」という人もいるが、量が多いと吐き気などの副作用が出てきやすい。・これまでのデータを見てみると母子感染(吉原先生は母児感染と言っていました)の確率は日本では20%ぐらい。
・針刺し事故での感染の確率はWHOの発表は0.5%以下だが、実際は0.3%ぐらい。
・HIV抗体検査はエンブ抗体(表面の抗体)とコア抗体(中の抗体)の両方をはかれる。
・感染してから、検査結果で陽性と分かるまでの期間は(アメリカのある検査データから)、DNA−PCR(リンパ球に入っているウイルスを見る)で20日後から。RNA−PCR(フリーのウイルスを見る)で22日後から。抗原検査で28日後から。抗体検査で45から55日後から。IGM抗体検査で40日後から。
・PCR法はウイルスの遺伝子を見つける検査。今までは施設間での結果の違いがあったが、キットができたので、今後はどこでもきちんと検査できるようになる。
・CD4の数え方は今でも施設間での結果の違いがある。
・母子感染の場合、母親の抗体が体内に残っている。だいたい14ヶ月ぐらい。1年半で90%は(抗体検査で)判別がつく。もっと早く知るためにはウイルス分離、抗原をさがす、PCR法がある。PCRでは1週間で約3割、1ヶ月で約8割の感染がわかる。
・ウイルス分離はある一定量以上ないと出てこないので、抗体検査より感度が悪い。
・(抗原はウイルスのことではないのですか、という質問に応えて)抗原とウイルスは少し違う。抗原は抗原抗体反応によって、見えなくなるが、ウイルスはいる。[よしおか]