血友病HIV感染被害に関する全面解決要求書
1995年(平成7年)3月27日
東京HIV訴訟原告団
文京区大塚3-19-10文京KSビル2階
鈴木利廣法律事務所内
TEL 03(3941)2636 FAX 03(3941)2473
〈はじめに〉
1980年代前半に販売された米国由来の血漿を原料とする高濃縮凝固因子製剤(以下本件血液製剤という)によって、日本の血友病患者(類縁疾患等を含む)のうち約4割、約2000名がAIDSの原因ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し、すでに約500名がAIDSを発症し、うち約300名が死亡した。更にこの被害は二次感染した家族にも及んでいる。我々は、本件血液製剤を承認し危険性を放置・隠蔽した国並びに本件血液製剤の製造・輸入・販売を行った(株)ミドリ十字、(財)化学及血清療法研究所、バクスター(株)、バイエル薬品(株)及び日本臓器製薬(株)(5社を以下「加害企業」という)を被告として、損害賠償請求訴訟(その後第6次まで)を提起し、本日第1陣(1989年10月東京地方裁判所に提出分まで)が結審した。我々はこの訴訟を、被害の完全救済と薬害の根絶を目的に提起し、「生きる訴訟」と呼んでいる。結審にあたり、被告の国及び加害企業に対して、以下のとおり早期全面解決を求めるものである。
〈要求事項〉
- 責任の明確化と謝罪 国及び加害企業は、感染被害者ら(未提訴者を含む、以下同じ)に対し、本件被害についての法的責任を認め、謝罪せよ。
- 賠償 国及び加害企業は、感染被害者らに対し、損害賠償金(請求額1被害者当り1億1500万円−弁護士費用を含む)を支払え。
- 恒久的対策
- 治療体制の確立
- 国は、HIV感染症の最新かつ最高水準の治療及び研究をも含む「輸血感染症治療研究センター」を新設せよ。
- 国及び加害企業は、HIV感染症の根治療法薬の開発のために、相当な人材及び財源を確保せよ。
- 国は、感染被害者らを障害者と認定し、公的医療として医療費の患者負担を免除せよ。
- 生活保障
- 国及び加害企業は、感染被害者らに対し、生活保障として健康管理手当(定期給付金)を支給せよ。
- 加害企業は、感染被害者らの雇用を確保し就労を保障せよ。
- 人権保障と差別の撤廃
- 国は、「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」を廃止し、「障害者・病者の人権保障と差別禁止に関する法律」を制定せよ。
- 国は、HIV感染者に対する雇用・教育をはじめとする社会的偏見・差別の撤廃を目的として「HIV感染者の差別撤廃のための指針」を作成して、その実施を徹底せよ。
- 薬害の根絶
- 国及び加害企業は、本件被害に関するすべての資料を公開し、真相を明らかにせよ。
- 国は、薬害の根絶のために「薬事法」を改正し、薬害監視調査オンブズマン制度の新設及びインフォームド・コンセントを含む患者の諸権利保障を立法化せよ。
- 国は、「血液事業基本法」を制定し、国内献血体制を確立し、血液製剤(遺伝子合成製剤を含む)の製造販売の承認を日本赤十字社に限定せよ。
- 国は、加害企業の本件加害行為につき、薬事法に基づく行政処分を実行せよ。