今回のT-GAP(トランスジェンダー・エイズ・プロジェクト)のページは、アジア太平洋エイズ会議が開かれたチェンマイ(タイ)からの速報です。
エイズに対する関心の低下が指摘されるなか開かれたこの会議では、まだまだ解決しなければならない問題が山積していることが明らかにされたのでした。今年で第3回目になるアジア太平洋地域のエイズ会議。52の国や地域から約3,000人が参加するとあって、規模/内容とも決して見劣りするものではありません。それなら「T-GAP(トランスジェンダー・エイズ・プロジェクト)も是非!」ということで、私たちも9月17日から21日まで、その会議に参加することになりました。今回はそのご報告(速報版)です。
まず記しておくべきは参加者のとても熱心な態度です。壇上の発言者はもちろんのこと、会議場からも活発な質問やコメントが寄せられていました。その一つ一つが活動の現場から生まれてきたものであるせいか、とてもリアリティにあふれるものばかり。一人一人の眼差しも意外なまでに真剣そのものでした。
内容的なことで印象的だったのは「当事者の重視」ということが繰り返し強調されたことです。エイズに関する活動―特に国際会議という場―では、悲しいことですがとかくPWA本人が不在になりがちです。ソーシャル・ワーカーやNGO、医師や研究者ももちろん大切な存在ですが、当事者が軽視されていたのでは何にもなりません。
今回の会議でもPWA自身にあまり発言の機会が与えられていないこと、そしてCSW(コマーシャル・セックス・ワーカー:性産業従事者)に至っては、立場そのものさえ軽んじられているという指摘すらありました。あるCSWの発言です。「私たちはあなた方に助けられたいのではない。あなた方と協力して何かを変えたいのだ。でも決めるのは私たち自身だ!」
この発言は、ただ単純に国際会議でPWA/CSWに発言のチャンスを増やすということを意味しているのではありません。むしろもう一度NGOとクライエントの関係を見直そうということではないでしょうか。これはすべてのNGOで再考すべきテーマです。一方、T-GAPならではの成果もいくつかありました。例えば海外のTG(トランスジェンダー)グループとのネットワーキングです。
まず一昨年の横浜エイズ会議以来の再会を果たしたのは「ピンク・トライアングル・マレーシア」(PTM)のメンバーたち。クアラルンプールでTGのCSWのために活動しているPTMはますます元気なご様子でした。「日本でもT-GAPって始めたんだよー」と知らせると誰よりも嬉しそうな顔をしてくれました。
また、フィリピンから来ていたのは「レメディオス」の面々。このグループ自体はTGのみを対象としたものではありませんが、会長さんはTG。セクシャリティの分科会で「もっとTGの国際的ネットワークを!」と声をあげていました。T-GAPが自己紹介すると、「日本に出稼ぎに行っているTGの子たちをサポートして!」と、早速ネットワーキングの成果が。T-GAPの活動も国際的に拡げていく必要があることを実感しました。この他にも報告すべきことはたくさんありますが今回は速報版です。次回のニュースレターで詳しくお伝えします。
(T-GAPコーディネーター 志麻みなみ バンコクのホテルにて)