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PWAの恋愛日記 僕たちの場合

大日向望 

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◎恋愛のことで悩めるのは幸せなことかも

 僕はPWAです。そして僕には幸いにして僕がPWAであることを知っているパートナーがいます。パートナーは、感染者ではありません。今回LAPの清水氏より「大日向さんと大日向さんのパートナーのことについて書いてみませんか?」との依頼を受けました。すごく考えさせていただきました。僕たちのようなPWAのカップルの恋愛やセックス、生活についてと言われても、感染する前の恋愛と特に変わったこともなく、またあまり詳しく書くのも自分の手の内公開みたいでなんだかはずかしいじゃないですか。僕たちははっきりいって不安定な状態のほうが多くて成功したカップルとはいえません。が、けっこううまくいっているほうだと思います。長い間一緒にいればむかつくこと、怒ること、かなしいことがそれなりにあります(ほとんど僕のほうが悪いんだけど)。でも、感染していることを知らされて、セックスはもちろん、人を好きになることもしてはいけませんという烙印を押されたと思い込んでいたあのころを思えば、こうして恋愛のことで悩むのは病気のことで悩むよりも幸せなことなのかもしれません。と、重い感じの書き出しになってしまいましたが、不安定だろうが、成功という到達点に達していなかろうが僕たちはと〜っても幸せです。以前と変わらず、僕はパートナーを愛しているし、必要だし、できるだけ長く一緒にいたいと思っています(ハハハなにのろけてんだ、俺は)。
 そんなわけで、突然始まったこの連載ですが、僕と同じPWAでパートナーを探しているとか、恋愛のことで悩んでいる人がいたら、恥をさらしていろいろ書いてみようと思うので読んでみてください。ためになる話は一つもないけど、こういうプロセスを踏むと失敗するんだという参考にはなると思うよ。パートナーがいるって、いいよ。

■第1章 出会い

◎ひとりで思い悩んでいた頃

 僕たちの出会いは、僕が感染した後に始まります。感染していることを知らされてからは、外にもあまり出歩かなくなり、人と関わることが少なくなっていました。親にも友人にも言えずに、このままひとり思い悩みながら死んでいくんだろうなと、このころは思っていました。
 病院では医師やケースワーカーが一生懸命HIVに関する勉強会や集会、ボランティア団体なんかを紹介してくれるんだけどその時はそんなこと考える余裕も興味もなくて、「今度行ってみるよ。」なんてその場限りの気のない返事を続けていたのです。

◎病院に通うのも悪くない

 病院に通い始めてから一年後くらいに医師から「今度感染者が集まるイベントがあるから君も来てくれるね」と半強制的に言われ、当日あまり乗り気じゃないまま行きました。
 そこに手伝いに来ていたのが今のパートナーです。もちろんその時は手伝いで来ていたとは知らなくて同じPWAだと思っていたんだけど。
 実を言うとその時初めて会ったわけじゃなくて、以前たしか病院で見かけたことがあって、『スゲーかわいい!』、『どこの科の患者だろう』と勝手にそれもかなり強烈な一目惚れ想像して、目が合ったような気がしてはドキドキ、こちらにニコッと笑いかけてくれたような気がしてワクワク、ニヤニヤ(俺は変態か!)としつつ、『結構病院に通うのも悪くないな〜』と思っていたのです(後日、そのことを本人に言ったら全然気づかなかったし見かけたこともないと言われ、りっぱなひとり上手だったことが判明)。
 でもその日は、親しくなりたい、なんとか近づきたいと思いながらもほんの少ししか話が出来なくて、結局一番肝心な名前も連絡先も聞けず、どういう根拠でそう感じたのかまたすぐに会える様な気がして、その時に聞けばいいやと思いながら別れたんだけど、当然、その日以来パッタリと会えなくなってしまいました。
 そして会えなければ会えないほどだんだん恋心が芽生えてきて好きで好きでたまらなり、病院に行く日をずらしてみたりしたんだけど全然会えなくて、やっと会えて話が出来たのはそれから確か一年後くらいにたまたま医療相談室に立ち寄ったときのことです。
 なんだかそのときは話が弾んで、今度食事に行く約束をして、そこでいろいろな話をしました。

◎嬉しかったのは「尋問」されなかったこと

 相手は、AIDSに関してかなり突っ込んだところまで勉強していて、PWAである僕よりかなり詳しくて、そして何よりも一番嬉しかったのはPWAの人だったら一度は経験すると思うんだけど、いつどこで感染したのか、相手はどんな人(男か女かを含めて)か、というかなり尋問に近い質問をいっさいしてこなかったのです。
 もちろんその時唐突ではあったんだけど(この時を逃すとまた会えなくなると思って)、「はじめて会った時から好きでした。良かったら…」的なことを伝えました。それからはけっこう急展開でいまに至っているわけです。
 きっとこれを読んでいて「うまいことやりやがって…」と御思いの方もいるでしょうが、聞くところによるとボランティア団体主催の講演会や勉強会、イベントなんかでPWAのカップルがうまれるっていうのは、そう珍しくもなくてよくある話らしいと、パートナーは申しております。
 今、パートナーを探してる人は、ボランティア団体主催の催し物に積極的に参加してみるのもひとつの手じゃない かな? 
 そこでパートナーが見つからなくても、徐々に仲間ができてそこからまた広がってパートナーが見つかることだってあるかもしれませんよ。
 まあ、いろいろそのへんはわかっていても、「PWAだから…」って後ずさりしちゃうんだよねー。僕もいまだにそういうところあるからよくわかりますよ。でも、がんばろうね!

■第2章 セックスのこと

 そんなわけで、今回のニュースレターの特集でもある『セックスのこと』についてもちょっとだけ書いてみようと思います(あまり書くと次号のネタがなくなるから)。
 パートナーはAIDSに関してはもちろんのこと、セーフセックスについてもきちんとした知識を持っていたのでそのへんはすんなりと!? 受け入れてくれたようです。
 これもボランティアに関係した人やきちんとした知識を持った人をパートナーに持つメリットの一つかな? と思います。僕自身もそれなりに主治医の先生に質問したり本を読んだりして勉強したけれど、お互いに知っていればよりスムーズに行えるはずです。
 とはいうものの僕は、勘違いした知識やドキッとするような失敗があって、パートナーに教えてもらったことがたくさんあります。
 そのへんを次号に書こうかなと思っています。ということで今回はこの辺で。

[大日向 望]

 ※プライバシー保護のため、個人名やシチュエーションを必要に応じて変更してあります。


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