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ぼちぼちインターネット[番外編]
ネットに広がるブルーリボン

かわぐち 

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■「ネットワークの言論の自由を守れ!」

- パソコンの前に座っているのがもったいないくらい、いい陽気の日が増えてきましたね。みなさんいかがお過ごしでしょうか。
 3回連続でインターネットの使い方をお話ししてきた「ぼちぼちインターネット」ですが、いつもハウツーばかりではつまらないので、今回は番外編として、ちょっとニュースな話をしてみたいと思います。
 最近ワールドワイド・ウェブ(WWW)を回っていると、図1(レッドリボンそっくりのブルーリボン)のような青いリボンをつけたページによく出会います。モノクロの誌面だとレッドリボンと区別がつかないかもしれませんが(笑)。
 図2(セーファーセックスのページ(http://www.safersex.org) 。黒い背景に青いリボンが…)のページは、前にも一度ご紹介した「セーファー・セックス」のホームページです。このニューズレターを読まれているインターネット・ユーザーなら、エイズ関連NGOやゲイ&レズビアン関連のホームページを利用される機会が多いと思うのですが、そうしたホームぺージではとくにこの青いリボンを見かけることが多かったりします。
- 青いリボンの意味は、「ネットワークの言論の自由を守れ!」です。このリボンがWWWで増殖したきっかけは、今年二月六日の米通信改革法の成立です。主な目的は通信・放送事業の大幅な規制緩和で、インターネットを舞台にしたさまざまなサービスやメディア事業を可能にする非常に重要な法律といえます。
 で、問題は、この通信改革法に含まれる「通信品位法」(Communications Decency Act, 略称CDA)条項です。たいへん長ったらしい条文なのですが、要するに放送またはコンピュータ・ネットワーク上で、18歳未満の受け手の目に触れるような形でわいせつな画像やメッセージを流した場合は刑法上の罪に問われる、というものです。情報を流した当人だけでなく、パソコン通信業者やインターネット接続業者なども同様に処罰の対象になります。
 自宅の机の前に座ったままで、その気になれば思いきりハードコアな画像も見られるのがインターネットですから、「子供を有害なポルノから守れ!」という規制推進派の主張にはそれなりにうなずける部分もあります。それでもネットワークのユーザーとしての目から見れば、通信品位法の内容には変なところがたくさんあります。  まず、ネットワークを流れる膨大な情報をどう規制する気なのか。マスコミはいろいろ騒いでいますが、インターネットを流れる情報のなかでポルノ画像の占める割合は微々たるものです。すべての情報を「検閲」し、「これはイカン」というものだけをピックアップするのはどう考えても物理的に不可能です。
- おまけに、例によって「わいせつ」の基準はとても難しい。通信品位法の熱心な推進派の一つはアメリカの宗教右派勢力でしたが、彼らの価値観に照らせば男同士が上半身裸で抱き合ってる写真なんかは「公序良俗に反するとんでもなくわいせつな絵柄」となってしまいます。みんなが納得する「公序良俗の範囲」なんてはじめからあり得ない。
 さらにこの法律では「現代の一般的な基準に照らして不快と思われる性行為もしくは性器を描写もしくは記述」した画像や各種の文章をネットワークで流すことも処罰の対象になります。これでは「コンドームの正しい付け方講座」さえおちおちできなくなってしまいます。
 この法案を提出した上院議員は、電子メールのアドレスさえ持っていませんでした。ネットワークの実態を知らず、それを必要ともしていない人々の基準で、一方的にポルノとされるほうはたまりません。当然のように、通信品位法には各方面から激しい反発が起きています。
- 法案が成立した六日から48時間は、世界一有名な検索サイト「ヤフー」をはじめ、多数のホームページの背景が抗議の意味をこめて黒く塗られました。フィラデルフィア州の司法当局は、この法律が表現の自由を定めた憲法に抵触する恐れがあるとみなし、法の執行を差し止める手続きを取っています。さらにマイクロソフトや全米出版協会など10以上の企業・団体が集団で違憲訴訟を起こしています。
 通信品位法はあくまでアメリカの法律ですが、ヤフーやセーファーセックス・ページの例を持ち出すまでもなく、アメリカ国内のWWWサイトを利用するユーザーは世界中にいます。あるいはLAPのホームページだって、アメリカ国内からアクセスできます。まさか日本くんだりまでFBIがお縄をかけにくるとは思いませんが、私たち日本国内のユーザーにとっても、通信品位法は大いに気になる法律といえるでしょう。

■「徹底した自己決定のコミュニティ」

- 通信品位法に限らず、宗教右派のような超コンサバな人々と、コンピュータ・ネットワークという新しいコミュニティに生息する「ネチズン(ネットワーク市民)」と呼ばれる人々との間では、最近何かと摩擦が起きています。企業トップのほとんどが電子メールを活用しているようなアメリカでも、政治的な発言力は宗教右派のほうが結構大きかったりすることが、問題を複雑にしています。
 コンサバな人々の理想の社会は、秩序ある均質で閉じた社会です。一方ネットワーク・コミュニティーは、開放性と多様性、絶えざる変化がその本質的な性質です。ネットワーク・コミュニティーは「仮想社会」だとよく言われますが現実の社会により近いのはどちらだと思いますか?
 ネットワークの多様性や変化のスピードは、ときに「混沌」と思えることもあるかもしれません。そのなかで上手に生きていく方法は、ポイントごとに自分なりの判断を下し、それに基づいて行動することにつきます。自分の判断力に誇りを持つからこそ、ネチズンは第三者の規制を毛嫌いするわけです。
 電子メールのアドレスをもらったその日から、あなたは「徹底した自己決定のコミュニティ」の仲間入りを果たすことになります。しんどそうに聞こえるかもしれませんが、同じ道を行く仲間は異常にたくさんいて、しかも基本的には他人に親切ですから大丈夫ですよ(笑)。

▼次回はいよいよ、自分自身のホームページ作りを解説してみたいと思います。[かわぐち]

[図1]レッドリボンそっくりのブルーリボン

[図2]セーファーセックスのページ(http://www.safersex.org)
黒い背景に青いリボンが…

[図3]WWW版カストロ通り、「ウェブカストロ」
(http://www.webcastro.com/)。出迎えてくれる2人の制作者の頭上に、またまた青いリボンが見える。

[図4]自由で開かれたネットワーク社会づくりを推進するエレクトロニック・フロンティア財団の青リボンキャンペーン・ページ。「こんなサイトまで引っかかる」リストなどがある。(http://www.eff.org/blueribbon.html)

[図5]デモクラシー・アンド・テクノロジー・センターのページ(http://www.cdt.org/cda.html)通信品位法全文が入手できる。


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