手足におもり、目にゴーグルなどの装具をつけ、高齢者が日常生活の様々な場面で感じる不自由さを疑似体験する「インスタント・シニア」。
私たちも介護研修の一環として3月22日に体験してきました。
おばあちゃんが歩いているのを追いこせなくなりました。切符を買うのもイライラせずに待つようになりました。80歳にならなくちゃわからない、そんな体験をして来ました。
耳栓、くもったゴーグル、二重のビニール手袋、手足におもり、関節を曲がりにくくするサポーター、こんなにたくさんの装具をつけて準備完了。インストラクターに先導された私たちはつえを持って出発しました[写真1]。
白内障を体験するためのゴーグルをつけた私たちの視界はぼーっと白くかすんでいます。降りるたびに暗くなっていく地下鉄の階段はとてもこわい。視野もせまいので次の階段が見えにくく、一段づつ、右、左、と降りていく。
まず、財布から110円出すのが大変。手先の感覚が鈍い。次に、どこにお金を入れたらいいのか分からない。出てきたジュースを取るためにしゃがむ。なかなか足が曲がらない。つえを立てかけるが、倒れてくる。取り出し口がいくつかあると、どこに出てきたのか見えず、手探り。おつりを取るのも不自由だ。今まで楽に買っていた自販機とは別物のようだった。
口元にジュースを持ってきた瞬間、ジュースが視界から消える。なにーっ。おじいちゃんがお茶を飲むとき、受け口のようになる気持ちが初めて分かった。白内障が進むと口元が見えない(鼻の下に手を垂直にあててみよう)。真下、真上、真横の視界がとても狭い。
お菓子の小袋も指先の感覚が鈍り開けられない。そしてお菓子も一度視界から消えて口に入る。
すべての装具を取ったとき、とってもさっぱりした。音もはっきり、色も鮮明で手足も軽い。
少しづつ「〜しにくい」というイライラは、毎日のストレスになってくるのではないだろうか。私たちはその状態を知らないから「のろのろ歩くなぁ」とか思ってしまう。
この体験は必修にすべきだ。
おじいちゃん、おばあちゃんがんばれ、と思う。[大籔直子]