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エイズ教育の周辺2〜情報の共有化〜

FAIDSスタッフ JINNTA

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 ■はじめに

 現在、文部省がモデル事業として、全国各地にエイズ教育を推進する地区を指定し、いろいろな活動が行われようとしている。いささか地方(田舎)に住んでいる私も、仕事場のおひざ元(保健所管内のある自治体)がこの指定地区となり、私もエイズ教育の周辺に参加する機会を得ているが、その経験から「情報の共有化」ということの重要性を感じているので、少し私見を述べてみたい。

 ■情報を共有するとは

 情報は、あるようでないものなのである。情報は、黙って座っていても入ってくるわけではない。やはり集めるための手段を開発しなければならないが、一番早い方法はひとりひとりが少しずつでも情報をあつめて、それを共有する方法である。情報は、独占することが「ある意味」では価値を生むわけであるが、しかし、あまりに独占されすぎると広がってゆかない。
 また、情報は、当然、質の高いものからガセあるいは偏見に満ちたものまでさまざまであるので、客観性をもった情報の質の評価が必要となる。一般に、情報は、みんなで討論し、検討することによって洗練され、客観性をもたせることができ、そして一人一人の身につくものとなる。従って、エイズにかかわるいろんな人たちがエイズ教育の現場に情報を提供し、そして吟味し、討論し、みんなで咀嚼して、そして広めてゆくということが、エイズ教育の前提として必要となる。
 手前ミソであるが、FAIDSの活動の一つは、この情報を共有する場をオンライン(Nifty-serve)上に提供することである。パソコン通信という双方向コミュニケーションの場であるので、今まで述べた情報共有過程が、バーチャルな場であるが、FAIDSにはそろっているのである。

 ■教育現場で

 一例をとってみると、たとえば、エイズ教育として学校教育現場で教えなければならないとされている大きな目標は、エイズの予防とエイズとの共生(もとよりliving withのことですが、学校では「共生」という言葉が使われています)であり、これらを教えるためにはエイズに関するあらゆる最新情報を得ておかなければならないことは、異論のないところであると思う。
 しかし、学校教育現場で通常のルートで入手できる資料は、残念ながら数年前に書かれたものであるというのが実態である。そういう資料には、たとえばエイズ医療については「感染すると5年程度で発病し」「発病すると完全に治す治療法がなく」「2年で死に至る」「だから予防しましょう」と書かれているようなものが少なくない。もちろん、こう教えると今の時点ではもう「うそ」を教えることになることは、賢明な読者の方はよくごぞんじであろうが、教育者自身は決してさぼっているわけではなく、新しい情報が入ってこない環境に置かれて孤軍奮闘しているのであれば、このような知識(つまり現時点ではウソとなっていること)を教えていること自体は、責める気にはならないし、また責めれば解決すると言う問題ではないような気がする。さらには、ケアサポートやバディ活動について触れている資料を入手するのは結構大変なのである。
 実は、地方(田舎)に住んでいても、たとえばFAIDSにアクセスして、SHIPニュースレターを読み、LAPニュースレターの新聞記事紹介を読んでいれば、このあたりの情報は容易に得られるわけである。ところが、これらの情報源は、教育をになう人たちにあまり知られていないだけではなく、そのあたりの情報を学校へむけて発信する人(従来ルートで)にもあまり知られていない、あるいは情報を入手できる立場にあってもあまり関心を持って迎えられていないような気がする(あくまでも憶測であるが)。つまり、全国的に見れば、エイズの医療とかケアサポートといった面は、教育現場ではあまり正確には語られていないと思われるが、決してそれは教える側(学校の先生とか)だけの問題ではなく、みんなの問題である。だから、誰かがそういう情報を教育の世界に持ち込み、あるいは情報のアクセス先を知らせてあげると言うことが、エイズ教育の周辺で必要となる。実際、今までの経験で言えば、これは教育現場からは大歓迎されることのようである。つまり、エイズ教育に取り組む現場の先生方も、私たちと同じように悩んでいたことだったのである。
 特に、地方(田舎)にいると、エイズに関するイベント(たとえばエイズ文化フォーラムのような)もなく、マスコミも取り上げないし、本屋に行っても本がないというのが現状なのである。学会などのエイズ関係の集会に行くと、最先端の情報を持っている人たちが集まっているから、よく「なんで今更こんなことを?」なんて言われることがあるが、それは地方(田舎)では初耳と言うことも多い。「エイズ(正しくはHIV感染症)はセックスでうつる」ということはみんな知っているが、「キルト」も「レッドリボン」も田舎では多くの人が初耳であり、ましてや「ケアサポートやバディ活動をやるNGOがある」ことなんて「全く知らなかった」というのが現状なのである。もちろん「PWA」なんて言葉も聞いたことがない。エイズ情報の地域間格差は、考えている以上に大きいのである。もちろん都会でも、関心のある人とない人の格差は大きいと思われるが、それに加えて、地方では関心のある人が持っている情報の絶対量も少ないと言うことである。

 ■今日のまとめ

 情報を共有すると言うことは、同じ目的を持った人たちが、みんなで考えることができると言うことである。エイズ教育を、みんなで育ててゆくためには、情報を共有するプロセスがもっと大事にされてもいいのではないか。そして情報を共有すると言うことにもっと社会的な価値を与えられてもいいのではないか。
 また、情報を教育現場に持ち込む人が、都会ではたくさんいるし、また、現場の人が集めることも比較的容易であるが、地方(田舎)では持ち込む人もなかなかいないし、ましてや現場の人が集めることは非常に難しいという情報格差が生じているということも大きな問題である。地方(田舎)に住むものとしては、自省を込めて、今後の課題として考えてゆかなければならない。

JINNTA[FAIDSスタッフ]
ホームページ http://homepage3.nifty.com/hksk/jinnta/


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