LAP NEWSLETTER

保健所からのエッセー
ボタンの掛け違え5〜地方のエイズ啓発〜

FAIDSスタッフ JINNTA 

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 ■地方から見ると夢物語

 この間、エイズ学会に行った。エイズ学会で語られていることは、ある意味では時代の最先端を行っており、NGOの発表もそれは同じである。その多くの活動は都市部でのものであり、正直な感想を述べれば、地方から見ると夢物語のように感じる。

 ■情報保証という活動

 エイズ学会では、わがFAIDSの活動も発表した。しかし、ここ数年間、私や伊勢さんが発表してきているが、不思議と手応えが感じられない。情報保障というFAIDSの活動そのものが、理解して貰えなかったかもしれない。つまり、「何で今更。そんなことはもうとっくにやられてきたことだ」というさめた反応である。しかし、地方には本当に情報がないのである。地方はいつまでたってもエイズ冬の時代である。同じようなことを、地方で講演などをすればかなり手応えが感じられるときもあるが…。

 ■「5年遅れている」

 意識調査でもそうである。地元の学校の先生方がPTAに行ったエイズに対する知識・意識調査がある。この調査の結果を見ると、数年前の総理府の調査を見ているようで、なかなか厳しい現状をたたきつけられている。私は「地方のエイズ啓発は5年遅れている」が口癖であるが、はからずもそういう結果となってしまった。地方では、まだまだ、レッドリボンをつけているだけで、かなり目立つのであるし、「エイズ」ということばを発するだけで敬遠されるのである。

 ■関心はあるはずだが

 地方では、これらのNGO活動はあまり知られていない。もちろん残念ながらLAPもであるが…。ただ、ケアサポート系の団体はCBO的な働きをしているので、地域密着型になるからある意味では当たり前といえるが、メッセージ系あるいは啓発系の活動を行っている超有名な数団体も、あまり知られていない。しかし、関心はみんな持っているはずである。現に、私の保健所ではLAPニュースレターを待合いの棚においているが、すでにかなりの人が読んでいるのか、1年もたたないのに、表紙はかなりいたんできている。また、里中真智子氏のエイズマンガもおいてあるが、これはなかなか人気者である。

 ■官製情報しかない

 地方で情報が得られないのは、地方には官製情報しかないからである。たとえば、NGO情報は都会では容易に入手できる。メッセージもたくさん入手できる。エイズ文化フォーラムのようなイベントもある。しかし、地方では、関心が呼び起こされていないだけではなく、たとえば関心を持ったときに入手できる情報自体が流れていないのである。たとえば、NGOが持っているメッセージや情報は、電話相談をのぞいては大部分が有償で提供されているため、まず、手紙や電話で問い合わせて、それから郵便局へ行ってお金を送らなければ入手することは出来ないし、大部分のNGOは「会員になれば情報を」という形態であるから、一つの情報を得るために数千円を要してしまい、どうしても二の足を踏んでしまう。それらは活動資金の問題からきていることであるわけだが、その結果、多くのメッセージ系・啓発系NGO活動は、地方からは利用されにくいものになってしまう。幸い、インターネットが普及してきて、比較的情報が入手されやすくはなってきた。インターネットでは老舗であるFAIDSやLAPは、地方からはかなりの利用度があるように感ずる。ただ、インターネット情報は玉石混淆である。これらの問題は、その地域の組織的努力が足らないからで、同じ努力をすればよいと言われれば返す言葉もないが、地方なりの特有の問題も存在している。
 地方では、エイズの最新情報が得られないために、エイズ啓発に熱心な人が、最新医療の情報を知らないがために、未だに「5年で発病して2年で死ぬ」ということを教えているのもまた事実である。

 ■保守的であるぶんだけ相談者の悩みも多い

 中央-地方間格差が温存されたまま、これからエイズ冬の時代にはいるのであろうか。エイズ相談で語られる背景は、都会も地方も変わりないと思うのだが…。たとえば性に関する問題はそうは変わりない。むしろ地方の方が保守的であるぶんだけ、相談者の悩みも多い。


 世界エイズデーの時、私は地元コミュニティエフエム局でトークを行った。次回はそのことも含めて、地方のエイズ啓発の問題をつづけてお送りしてみたい。

JINNTA[FAIDSスタッフ]
ホームページ http://homepage3.nifty.com/hksk/jinnta/


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