LAP NEWSLETTER

全国のHIV関連NGOが集う
ボランティア指導者研修会参加報告記

鈴木圭一郎 

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 98年3月14日〜15日、一泊二日の日程で「ボランティア指導者研修会」に参加してきました。
 講義、ディスカッション、ワークショップと盛りだくさんの研修内容はもちろん、北は北海道から南は福岡まで20団体、26名と幅広い年代のいろんなタイプの人たちが集まり、NGO同士の情報交換の場としても大変貴重な体験になりました。

 ■どの参加者も積極的でパワフルだった

 この研修会、正式には厚生省委託エイズ予防財団主催ボランティア指導者育成事業「平成9年度ボランティア指導者研修会」といいます。実際の企画や運営は「共催」のNGOが行っています。前回はHIVと人権情報センター、ケアーズが共催でした。今回はエイズ・サポート千葉(ASC)が共催、LAPが事務局、SHIPが医療講座コーディネートを担当し、3つのNGOが協力しながら企画・運営を行いました。
 会場はJR京葉線「海浜幕張駅」から徒歩8分ほどの財団法人海外職業訓練協会(OVTA)海外職業訓練センター。宿泊所は同施設内のホテルでした。
 LAPからの参加者は僕一人だったのですが、今回LAPは事務局を任されており、受付には代表の清水氏をはじめ、知った顔が見られて心細さを感じることもなく、出していただいたウエルカムコーヒーを飲みながら始まるのを待ちました。
 研修会は共催のエイズ・サポート千葉の平田俊明さんによる司会進行で始まりました。参加者はほぼ初対面同士だったので、まず全員が立ち上がって、うろうろ歩き回りながら互いに自己紹介。どの参加者の方も積極的でパワフルといった印象です。

 ■1日目は「最新の治療」と「薬害エイズ和解後」

 場がほぐれたところで最初の講座、順天堂大学の松本孝夫氏による「HIV感染症の基礎と最新の治療の進歩」。免疫機能のいろはから丁寧に説明していただいたので、後半の最新の治療についての時間が少し短くなってしまったのは残念でした。カクテル療法や薬剤費の問題などの細かい話は2日目の井上洋士氏の講座を待つことにします。
 次の講座は、はばたき福祉事業団の大平勝美氏による「薬害エイズの和解後〜今後の展望と課題」。はばたき福祉事業団というのは薬害の被害者(本人と遺族を含む)の救済事業のために被害者が和解金の一部を出して、去年4月に設立されたものです(LAPニュースレター21号参照)。被害者に一番身近な支援団体として、和解で勝ち取った恒久対策のコーディネートと積極的支援(救済医療、医療・福祉環境の整備と改善、遺族弔意事業など)を行っているものです。今後の課題として、[1]埋もれていく被害者、孤独な被害者に手が届くようにする、[2]エイズ医療・福祉などを広く社会に還元していく、[3]薬害根絶に関する活動を行う、[4]薬害の被害者とボランティア活動、をあげておられました。
 初日の講座はこれで終了。最後に各団体の紹介をしたあと、ラウンジに場所を移し、幕張の夜景を見ながらの立食パーティ。初対面ばかりとは思えない盛り上がりで、みんな完全に打ち解けたという感じです。そのまま交流会に移り、夜11時に会場が閉まったあともホテルの各部屋で談義が続いていました。

 ■2日目はまず自分自身を見つめ直すことから

 二日目は朝食のあと、千葉大学の永松未生氏によるワークショップ「自分探しの心理学」。エゴグラムという交流分析にもとづいた心理テストを各自が行い、自分の性格や行動のパターンを分析してみました。日頃、電話相談やカウンセリングなどをしている参加者も多いと思うのですが、今回は自分自身の心理的側面に目を向けてみようという意味もある講座です。ちなみに僕は典型的な「夢想家タイプ」。よく言えば「詩情豊か、純朴、お人好し」、悪く言えば「現実無視、計画性なし、自分勝手」。そして「もっと客観的に考えるようにしましょう」とのコメント…。そういえば、ちょっと前に別のテストをやったときにも「超主観的」と出ました。オ、オレってそんな奴だったの? …だったのね。永松氏の目論見通り、マジで自分自身を見つめ直してしまいました。

 ■「日常生活と援助」のディスカッション

 休憩をはさんでSHIP、エイズ予防財団の井上洋士氏のディスカッション「HIV感染者の日常生活と援助」。まずスライドを見ながら感染者の通院の頻度、通院時間、服薬状況、情報入手の仕方、経済状況などについて説明を受けました。カクテル療法の薬の組み合わせ方、薬の値段のつけられ方の変な法則(?)や、最新の治療法について等、突っ込んだ話を聞くことができました。そのあとは参加者から各団体が抱えている問題点を踏まえながらの質問が頻発。語り足りないなという雰囲気のまま時間が来てしまいました。

 ■緊張していることに気付くボディワーク

 昼食をとったあと、最後のプログラムはワークショップ「気づきのボディワーク」。千葉県立こども病院の森山直人氏によるもので、全員ジャージに着替え、二人一組になり、何て言ったらいいか相手をリラックスさせる体操をする、といった感じでしょうか。床にあお向けになっている方はとにかくゆったりとして相方に身を任せる。相方は寝ている者の指先を取って腕を持ち上げ、プルプルとシェイクさせて筋肉の緊張をほぐしてあげる。こんな感じで手、足、首、肩をシェイク&回旋などのテクニックを使って「脱力」させる。テーマは「脱力」です。確かになんともいえずいい気持ちになります。いびきをかいて、眠ってしまう人もいたくらいです。脱力することで自分が普段いかに緊張して生活しているか、ということに「気づく」わけです。泣いてしまったり、全く忘れていた記憶が蘇ってきたりすることもあるそうです。とはいえ、バリバリに「緊張」することでやっとなんとか頑張っていられる人もいるので、緊張は無くしてしまえばいいというものではないのだそうです。今回は「実は緊張している自分」に気づいてみましょう、というワークでした。体を使って自分の心のありように気づくというところが面白いですよね。気持ちもいいし。
 全てのプログラムが終了したあと、一人づつ感想を述べあって閉会。みんなで後片付けをして、連絡先を教えあったりしながら、それぞれ新幹線、飛行機、車等々で帰路につきました。

 ■「座って講義を聞くだけではない講習会」

 エイズ・サポート千葉の人たちの「座って講義を聞くだけの研修会にはしたくない」という意向で、様々なタイプのプログラムがあって、フレンドリーな雰囲気の中、楽しく過ごすことができました。個人的には最近、HIV方面の勉強不足を反省していたところだったので、タイムリーで有意義でした。各地域のボランティアの人たちが集合するという機会も少ないので、情報交換の場としても大変貴重な体験だったと思います。

 ■参加団体一覧

  1. 北海道セクシャル・マイノリティ協会 (HSA) 札幌ミーティング
  2. レッドリボンさっぽろ
  3. 東北HIVコミュニケーションズ
  4. 山形HIV診療を支えるコ・メディカルの会 (YACOM)
  5. HIVと人権・情報センター東京
  6. Campus AIDS Interface (CAI)
  7. ぷれいす東京
  8. AIDSネットワーク横浜 (ANY)
  9. 京都YWCA・若者・女性とHIV/AIDSプロジェクト
  10. HIVと人権・情報センター大阪支部
  11. ケアーズ
  12. 広島エイズダイアル (HAD)
  13. 山口AIDSボランティア (YAV)
  14. HIVと人権・情報センター四国支部
  15. AIDS WORKERS 福岡
  16. エイズフォーラム
  17. 福岡県久留米保健所
  18. エイズ・サポート千葉 (ASC)
  19. ライフ・エイズ・プロジェクト (LAP)
  20. SHIP ― ステイ・ヘルシー・インフォメーション・プロジェクト

 ■97年度ボランティア指導者研修会タイムテーブル

98年3月14日(土)

  • 13:00〜13:20 受付
  • 13:20〜14:20 オリエンテーション、自己紹介
  • 14:20〜15:50 講座「HIV感染症の基礎と最新の治療の進歩」講師:順天堂大学附属病院総合診療部 松本孝夫
  • 16:00〜17:30 講座「薬害エイズの和解後〜今後の展望と課題」講師:はばたき福祉事業団理事長 大平勝美
  • 17:30〜 グループ紹介
  • 19:00〜 交流会(夕食)
  • 98年3月15日(日)

  • 09:00〜10:25 ワークショップ「自分探しの心理学」講師:千葉大学付属病院精神科心理職 永松未生
  • 10:35〜12:00 ディスカッション「HIV感染者の日常生活と援助」講師:SHIP・エイズ予防財団 井上洋士
  • 12:00〜13:00 昼食
  • 13:00〜16:30 ワークショップ「気づきのボディワーク」講師:千葉県立こども病院MSW/臨床心理士 森山直人
  • 16:30〜17:30 まとめ、閉会式、アンケート

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