2003年3月、厚生労働省委託・財団法人エイズ予防財団主催「2002年度ボランティア指導者研修会」(実施:CAI(Campus AIDS Interface))が東京で開催されました。ボランティア指導者研修会参加者は8日〜9日の1泊2日、ユーススタッフ・トレーニー(スタッフ研修参加者)は7日〜9日の2泊3日の日程でした。
[講座1]8日14時30分〜 | |
学校における性教育実践講座 神奈川県厚木保健所医師(当時)岩室紳也※1&指導者研修会参加の皆様 |
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※1 2003年4月から(社)地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター |
教育現場でエイズに関する講演を行う時に「一番に伝えたい事は何ですか?」という質問から始まった。
参加者からは「予防・セーファーセックスすることが大切である」ことを伝えたいという意見があった。
他にも「これまではすぐに死んでしまう病気だったけど、薬で長生きできるようになった」事を伝えたいという意見や「病気は検査でしかわからない、まずは検査を受けることが大切である」など、様々な意見が述べられた。
岩室氏によると、今の教育現場の子どもたちはエイズに関して聞いたことがあるのは、ニュースでの薬害エイズの報道くらいであるとのことだった。小中学生に関しては、エイズ自体を知らない子が多い。だから、それを踏まえて性教育を実践することが大切であると教えられた。
そして、引き続いて、岩室氏からこれまでの経験談や、どういうことに気をつけたらよいかを教えていただいた。
時間厳守/照れない/子どもたちの前では笑わない、まじめな態度/間の取り方を上手に/子どもたちがうるさくなっても、静かになるまで待つ。先生に介入させない/何かインパクトを残す/何かひとつ掴みがほしい/怖じけずに入り込むこと/学校の先生が話していることは話さない/「コンドームは教えないでください。使わないでください」と言われたら、最後まで守る/エイズだけでなく、性教育をやっているという面をPRする/欲求不満を聞き手や話し手に残すくらいがいい/「ゲイ」というと笑いが起きるが、カミングアウトしている学生がいると、笑いは起きない/中学生に「親には嘘を言ってもいいが、ドクターにはセックスしたと言いなさい」/医療関係者も感染するように、知識があっても感染することの恐さがある
岩室氏の軽快でテンポのよい講義は飽きることもなく、いつの間にか引き込まれてしまった。あっという間に時間になってしまった。受講者の中には実際に学校などで講演活動をしている人も多く、活発な質疑応答が行われた。特に地方からの参加者は積極的であった。メモをとる参加者も多く、貴重な時間であった。
今まで教育現場とは関わりはなかったが、この講義を受け、性教育を実践してみようと少し思った。
[講座2]8日16時45分〜 | |
NGO/NPO運営における情報活用法 アップルディスアビリティーセンター長 福田正 |
1994年10月からアップルディスアビリティーセンター長を兼任された講師の今までの経歴が紹介された。その後、ビデオを見ながらの講義が始まった。
ビデオの内容は林家こぶ平氏がリポーターで出演しており、普段は話すことができない自閉症の小学生が、会話補助装置のトーキングエイド「声の出る文字盤」を使うことによってコミュニケーションがとれるようになり、対話が生まれた感動的な内容であった。これはこぶ平氏の尽力も大きかったそうである。また、ある無菌室で闘病中の小学生が、映画を見たいという夢を叶えるべく、病室内で「ET」を見せてあげた話などが映像とともに紹介された。
福田氏は「技術より、どういうふうにコミュニケーションをとるかに重点をおいて考えている。機械を使うことによるメリットやデメリットを考えつつ、残存機能を活かすことを考えている」と語っていた。また、「自分の専門外の人と付き合うことの大切さや、これから5年後、10年後を考えながら行動することの大切さ」も語っていた。
[交流会]8日18時30分〜 | |
処:屋形船〜隅田川・浅草発 |
開催地が浅草だったこともあり、粋な計らいで屋形船にて交流会が行われた。隅田川の浅草を出発し、お台場、東京タワー、レインボーブリッジなどの夜景を鑑賞しながら行われた。みんな初めての屋形船で興奮していた。船酔いの心配もしたが、酒に酔っただけだった。
今回、スペシャルゲストにドラァグクイーンのマロンズを迎えての宴が行われた。トークやネタの他にコンドームの付け方講座も開催された。女性用のコンドームの付け方も披露していた。参加者それぞれが交流を深めあった。
[講座3]9日9時〜 | |
ICAAPとNGO/NPOの具体的取り組み〜ユースフォーラムの場合 神戸会議NGO連絡会世話人 柏崎正雄、沢田貴志、ユースフォーラムの皆様 |
今年(※2005年への延期が決定)の11月27日から開催される神戸での国際会議についてのインフォメーションがあった。ユースも神戸会場の近くの新開地にて、会議で声が反映されにくい若者のために、日本の若者との交流をめざして「ユースフォーラム」を開催する。今は計画中ということでいろんな意見が出され盛り上がっていた。
国際会議ということで、英語が中心で敬遠していたが、プレナリーには通訳が付いたり、他のプログラムでもボランティアで通訳が付いたり、見ず知らずの団体の通訳の近くに座って、盗み聞きすることもできそうなので、思っていたより参加しやすそうだなあと感じた。
[講座4]9日10時30分〜 | |
HIVをめぐる裁判と事例について 清水勉弁護士、警視庁HIV不当解雇事件の原告 |
HIVをめぐる裁判や事例について、これまでの経過などが詳細に報告された。
清水弁護士から、このような深刻な事件に関わるときに、当事者が深刻すぎると、周囲の人が敬遠することがあるので、深刻であればあるほど、深刻さを見せずに明るく振る舞う作戦も大切だと教えられた。
また、今後アンケートや調査などを行う機会がある時は、悪用されることも意識して作って欲しい。意図に反して同情や差別の対象にされたり、上下関係をつくることもある。調査された人が喜ぶものを作って欲しい。「こんな風にまとまるなら、協力しなかった」という風にはならないように気をつけてください、また、不満や疑問、批判に耐えられるものを作るようにと助言があった。
原告からは、警察学校で自主退学を迫られたときに、その場で、すぐサインをして退学したことに後悔があり、あの時に、「考える時間をください」と言っていれば、また違った方向に進んだかも知れない、という思いがあるようで、「決断に迷った時は、すぐに答えを出すのではなくて、『考える時間をください』と言って、考える時間をもらってください」と、助言があった。
(なお、東京地裁は2003年5月28日、警視庁HIV不当解雇訴訟の判決で同意のない検査は違法とし、かつ検査の必要性そのものを否定。警察病院にも故意もしくは重大な過失と指摘した上で、東京都と警察病院(自警会)に440万円の賠償を命じた。その後、警視庁は控訴断念し、東京都側の敗訴が確定した)
[講座5]9日13時〜 | |
セクシュアリティー別支援(女性、ゲイ) コーディネーター 生島嗣(ぷれいす東京)、コメンテーター 長谷川博史、北山翔子 |
この講座ではグループに分かれて、事例に対する答えを考えるグループワークが行われた。
各グループとも活発な意見交換が行われていた。ざまざまなバックグラウンドを持ったメンバーだったので、自分では考えられない興味深い意見も出たり、いろんな意見が飛び出した。コメンテーターからは、サポート側の価値観を押しつけてしまうのはよくないなどの助言があった。
事例はよくある質問というわけではなく、全くの創作だった。
例えば、
事例1「30代の女性の感染者。服薬中でウイルス量は検出量限界以下。ある男性から誘われて、付き合ううちに感染のことを言わずにセックスしてしまいました。彼には嫌われたくないのですが、どのようにして打ち明けたらいいのでしょうか」
事例2「自分は32才のゲイの感染者です。現在、彼氏がいますが、感染がわかってすぐに、彼に自分の感染を知らせました。その結果、かえって二人の距離は近づきました。しかし、時々するセックスのことで悩んでいます。感染している自分は予防したいと思いますが、時々、彼はコンドームを外してしまいます。その事を注意すると、自分から感染するのは構わないと言われてしまい、困っています。彼は抗体検査すら受けてくれません。どうしたらいいでしょう」
このような事例があった。みなさんならどう答えますか?
[閉会式]9日16時〜 |
修了証書の授与があった。この研修会が終わった後も他のNGO団体と連絡が容易に取れるよう、メーリングリストを使って情報交換が行えるようになっているとのインフォメーションがされた。
これからは団体がこれまで以上の協力関係を築き、活動を行っていくことだろう。[セリ]
2002年度ボランティア指導者研修会 日程 | ||||||||||||||||||||||||||||||
第1日目 3月8日(土)
第2日目 3月9日(日)
※ユーススタッフ・トレーニーは7日から2泊3日の日程でした。 |
コーディネート:Campus AIDS Interface (CAI)
- AIDS Activists
- AIDS Poster Project
- AIDSネットワーク横浜 (ANY)
- ANGEL LIFE NAGOYA
- BASE KOBE
- CAST (南山大学有志団体)
- G3
- HEARTY NETWORK
- IFMSA日本代表日本国際医学生連盟
- JANP+ (ジャンププラス)
- JAPAN AIDS PREVENTION AWARENESS Network (JAPANetwork)
- Kラウンジ
- Love Act Fukuoka
- NGO法人 レッドリボンさっぽろ
- OLP
- Peer Support in 宮崎
- Positive生活情報館
- SWASH
- Thinkin' of プロジェクト
- WRAP UP!
- Youth Focus KOBE(ユース・フォーカス・神戸)
- ポジティブ・カフェ・ノーチェ
- メモリアル・キルト・ジャパン (MQJ)
- モラルドーナツ
- ライフ・エイズ・プロジェクト (LAP)
- 埼玉県エイズ情報センター
- 四国エイズプロジェクト
- 人権と共生を考える エイズ・ワーカーズ・福岡
- 川口子どもネットワーク
- 東北HIVコミュニケーションズ (THC)
- 特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会
- 特定非営利活動法人 アムダ
- 特定非営利活動法人 ぷれいす東京
- 特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン
- 特定非営利活動法人 動くゲイとレズビアンの会
- 特定非営利活動法人 奈良HIV情報センター