『LAPニュースレター』を手にするみなさまは、必然的にゲイ男性と交流がある、というかたが多いでしょう。あるいはご自身が、人には話していないけど、レズビアンやゲイだというかたもいるかもしれません。
90年代後半から、同性愛の基礎知識的な啓蒙書も、いろいろ出版されるようになりました。大きな書店のジェンダー・セクシュアリティのコーナーへ行けば、それらを手にすることができます。HIVコミュニティにいて、いまさらゲイ嫌いな石原慎太郎みたいなことを言う人は、いないでしょう。
同性愛者について、ひととおりのことがわかったら、こんどはそのレズビアンやゲイが、日常の暮らしのなかで、どういう思いで生きていたり、既存の制度のなかでどんな不合理にぶつかっているか。レズビアンやゲイのサークルやNPOもいろいろあるようだけど、そこではどんなことが問題になっているのか……。そうしたことがらへ、関心を広げてはみませんか?
昨年6月、創刊号を送りだしたこの季刊『にじ』は、いわば同性愛者の『暮しの手帖』のような本です。「暮らしとコミュニティ、NPOを結ぶ、同性愛者のライフスタイル創造マガジン」をテーマに、同性愛者運動の国際的なシンボルである、レインボーフラッグにちなんで名づけました。
64ページの小さな誌面に、たくさんのことを詰め込みました。無名の、けっしてカッコよくはないかもしれないけど、この国の現実のなかで生きている仲間たちの聞き書き。ヘテロ本位に組み立てられた社会で、制度の欠陥を体当たり取材する「世の中調べ隊」では、「公営住宅は同性二人で申し込めるか?」など。ゲイのあいだでの感染拡大が懸案のエイズについて、「いま、HIVに感染するとどうなるか」は、現在の医療情報や障害者手帳の制度を、感染者からの手紙の形式でまとめ、わかりやすいと好評でした。
そうそう、毎号、この「性的健康とコミュニティ」という枠で、こうしたHIVをはじめとした健康記事を掲載、これはホームページでも全文公開しています。
90年代をつうじて、若いレズビアンやゲイは、自分は同性愛でいいんだ、ということを学び、自信をもってきました。しかし、いま30代になり、40代になろうとして、じつはその先が見えません。これまでカムアウトした中年のゲイがいたでしょうか。オープンリーなレズビアンのおばあさんがいたでしょうか。同性愛者として大人になるとはどういうことか? エイジングというテーマで、みなさまもおなじみの鬼塚直樹さんが、ご自身のライフヒストリーや向こうのステキな先輩オジサンの話を、連載しています。
この6月には、第5号を発行しました。特集は「エイズ・人・カネ・コミュニティ」。ゲイ陽性者3人の恋愛やセックスの聞き書き、エイズNPO活動家のインタビュー、今年度、行政は同性間対策でなにをするのか、病気と差別についてハンセン病患者に聞く、神戸エイズ会議について……などの内容です。
お求めは、大きな書店さんのセクシュアリティ書のコーナーや、有名ゲイショップにあります。書店にない場合は、「地方小(ちほうしょう)センター取り扱いの『にじ』○号」といって注文してください(バックナンバーも可)。直接購読もできます。※季刊『にじ』は8号をもって休刊となりました。
[永易至文]