LAP NEWSLETTER

東京都衛生局主催
エイズボランティア講習会報告

田村祐司 

RETURN TO26号目次に戻る

 毎年、東京都衛生局が開催してるエイズボランティア講習会が今年度(平成10年度)も東京・飯田橋のセントラルプラザで98年11月19日〜21日まで、3日間の日程で行われました。申し込みはHIV関連団体ごとに行われ、LAPをはじめとするNGO・NPOから多数の参加がありました。
 民間の支援団体を対象に、こうした講習会を続けられている東京都には頭の下がる思いです。ここでは1日目と2日目の講習について簡単にご報告します。

RETURN TO[参考]東京都衛生局医療福祉部エイズ対策室発行「エイズニュースレター」
http://www.tokyo-eiken.go.jp/AIDS/news.html

平成10年度エイズ・ボランティア講習会プログラム

  11月19日(木)午後6時30分〜9時00分
   「HIV感染症の治療と看護の現場から」
    都立駒込病院医師 今村顕史 看護婦 有馬美奈

  11月20日(金)午後6時30分〜9時00分
   「ボランティア活動の進め方」
    NPO研修・情報センター代表 世古一穂

  11月21日(土)午前10時00分〜午後5時00分
   「カウンセリング技術を高めるために」
    東京都エイズ専門相談員 山中京子、松本智子

 ■治療開始は患者自身の準備が整ってから

 1日目の講習「HIV感染症の治療と看護の現場から」は2部構成でした。第1部はHIV感染症についての一般論で、教科書的な内容から現在の治療状況までを医師の今村氏が主に解説されました。一般論とはいっても、HIV治療戦略においてCD4数とウイルス量が持つ意味についてや、抗HIV薬内服の開始には薬剤の知識、生活、費用、継続の意志など患者自身の準備が整っていることが必要という視点を含んだ「治療開始前のチェックポイント」など、その内容は実際的で、PHA(HIV感染者・患者)の支援活動を行っていく上で欠かすことのできないものだと感じました。

 第2部は実際のHIV感染症診療上の様々な問題について症例や資料をもとに「現在のHIV診療の課題について一緒に考えてもらう」ことを目的とし、看護婦の有馬氏が主に担当されました。抗HIV薬内服、外国人、女性、ティーンエイジャー、日和見感染症治療、医療者という項目に問題点を分類し、具体的な症例の呈示も含めて講習が行われました。初診や再診時のナースによるオリエンテーションでは「他の人たちはどうしてるんですか?」という質問が多く、患者さんの手記などが載った冊子を渡すこともあるとのこと。外来のラックにはNGOの会報をはじめとする様々な資料を置いているそうです。また、アドヒアランスや服薬援助の重要性についても多くの時間を割かれていました。

 当日、配付された約40ページの資料は今村氏が患者さんやその家族、NGOの方、カウンセラー、MSW(メディカルソーシャルワーカー)、看護婦等を対象につくられたものだということで、とても分かりやすく、かつ充実しているものでした。一度聞いただけではよく理解できなかったことも家に帰って復習でき、また残念ながら参加できなかった人へもこの資料をもとに講習の内容を伝えることができます。今村氏は新しい情報に対応していくために今後も定期的に年数回程度の改定を行い、近々、インターネットホームページにも掲載する予定だそうです。

 ■NPOの活動には何が必要なのか

happy 2日目の講習「ボランティア活動の進め方」はタイトルの通り、ボランティア活動を進めていく上での示唆に富む講習でした。NPO(Nonprofit Organization=民間非営利組織)とは何か、その役割は、そしてNPOには何が必要かといったことがらについて講師の世古一穂氏(NPO研修・情報センター代表)が解説されました。個人としての「ボランティア」と組織として継続した活動をする「NPO」の違いを認識する必要性など、ハッとさせられる講習でした。本当に基本的なことなのですが、「満足・不満の関係図」がとても印象に残ったのでご紹介します[右図]。

 また施行を間近に控えていた特定非営利活動推進法(NPO法)の概要と意義等の解説もされました。寄付した人への税制の免除がないことから、法人格を取っても意味がないという意見について世古氏は、法人格を取るということは自分が何者であるか、その存在証明をすることである、免税があるかどうかは別の問題、と言われていました。ちなみにNPO法に書かれている「社員」とは「社団の構成員」という意味だそうです。

※解説「特定非営利活動推進法」(NPO法)
 民間非営利団体の法人格取得を可能にする法律で98年12月1日から施行された。同法の定める「特定非営利活動」には「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」「社会教育の推進を図る活動」等が挙げられており、HIV関連のNPO、NGOのほぼ全てが該当するとみられる。法人格取得にはこれ以外にも様々な条件や手続きが必要だが、事務所を借りるときなどの契約や銀行口座の開設等も行いやすくなるなどNPOの発展を促進し、活動の継続性を高めるものとして期待されている。


RETURN TO26号目次に戻る