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■年に1度じゃものたりない! 貴重な研修会
年度末恒例となった感のあるボランティア指導者研修会が今年度も開催された。1泊2日と限られた日程ながら、毎年、情報やスキルをアップデートできるこの研修会は特に研修を受ける機会の少ない地方のグループには貴重な場となっている。
一日目はLAPの清水の司会でオリエンテーション、そして各参加者の自己紹介から始まった。
午後2時からは講座1「HIV感染症の現在」。参加者にはHIV感染者・患者(PHA)のサポートをしている人から団体の事務局を担当している人まで様々。そのためこの医療講座は、HIV感染症の全体像と最新情報を専門家以外にも分かりやすく解説するグループA(今村顕史氏)、専門家の間でも議論のある治療法の選択の際に必要になる最新情報などを取り上げるグループB(山元泰之氏)に分かれて行なわれた。
HIV感染症診療上の様々な問題点、医療者側が改めるべき点、服薬援助など個々の診療に対して支援者が連携をもってあたることの重要性、また治療法を選択する際、一人ひとりの状況や考え方、日常生活との兼ね合いなどがどのように考慮されるべきかといったよりよい治療環境の整備等についてもふれられた。
なお、グループB受講者には事前に51ページにおよぶ講座資料を送付して「予習」してもらい、質問や疑問点を寄せていただいた。続いてはワークショップ1「HIVに感染するとはどういうことか〜抗体検査から服薬まで〜」。抗体検査疑似体験、診察体験、服薬援助シートの作成までを扱う壮大な(無謀な?)ワークショップ。構成はLAPの清水が考えたそうなのだが、盛り込みすぎた内容の収拾がつかなくなり、全体のファシリテーターを司会進行の腕に定評のある井上洋士氏に依頼したのだとか!? このワークショップではPHAの生活の質(QOL)を維持、向上していく支援活動の実現の一助となるように、検査・告知・受診・服薬といった一連の過程の中で、PHAに関わってくる様々な問題を明らかにすることでQOLの構成要素を明確にしていった。
抗体検査疑似体験はファシリテーターのナレーションにそって参加者が頭の中でイメージをふくらませるという手法がとられた。抗体検査を受ける決心をする、検査所に向かう、検査を受ける、結果を待つ、検査結果を聞くかどうかを決めるといった流れで抗体検査を擬似的に体験した。電話相談などでも検査についての相談は多い。検査のメリットとデメリット、様々な心理的負担などを再確認する機会となった。
診察体験は3人づつのグループ(1人がPHA役、2人が支援者役)に分かれ、PHA役の人が保健所から紹介された病院に行き、CD4数やウイルス量の結果を聞く、という設定で行われた(時間節約のため、初めていった病院ですぐ結果が分かることにさせていただいた)。その過程でPHAがどのような状況に置かれるのか、どのような支援が求められるのかといったことがグループ内で明らかになっていった。 会場の中に設けられた2つの「病院」では今村氏と日笠氏が診察にあたった。「待合室」には看護婦役のスタッフが待機し、HIVoice、SHIP、LAPニュースレターが自由に持ち帰れる資料として置かれた。 診察体験実習で一番大変だったのは医師役のお二人。初診患者を短時間に診るというだけでも大変なのに、PHA役の人がここぞとばかりに難しい状況設定をしてきたり、「再診」に来た人もいたとか。本当にお疲れさまでした。これにこりずに今後ともよろしくお願い申し上げます。服薬援助シートについては日笠氏がパソコンをプロジェクターにつないで解説。スライドと違い、動きのある画面での説明はとても分かりやすかった。
その人のライフスタイルにあわせた服薬をどのように実現していくか。そのためにNGO/NPOは何ができるのか。専門職とNGO/NPOとの関係はどうあるべきか。PHAの立場に立った支援をどう行っていくかは今後も大きな課題である。午後7時からは懇親会。講師の方も参加し、立食パーティ形式で行われた。昨年の研修会から1年ぶりに会うという参加者も多く制限時間いっぱいまで話は続いていた。
懇親会の後、有志が山元氏を囲み、特別講座が始まった。講座1の時間内では説明しきれなかった点を山元氏が解説し、打ち解けた雰囲気の中で質疑も活発だった。
■2日目も朝から気を抜く暇なしのプログラム
2日目の総合司会はJANAC(HIV/AIDS看護研究会)の堀氏が担当された。朝食の後、午前9時からは講座2「社会保障と社会福祉〜その理念と実際の利用」が始まった。講師は医療ソーシャルワーカーの本橋宏一氏。福祉については「どうしたら医療費助成を受けられるのか」「手帳を取ると何がもらえるのか」といった話が先行しがちなのだが、今回は「社会保障や社会福祉とは一体、何なのか」という点に焦点が当てられた。いってみればこれは制度を活用していく為の土台となる部分である。
よく「社会資源の活用」といったことがいわれているが、社会資源とは何をさしているのだろう? PHAの中には「福祉のお世話になる」ことへの抵抗感を持つ人もいる。福祉サービスを受ける人は「負け組」なのだろうか? 大きな問題提起を含んだ講座だった。講座3「相談活動と心理的対人援助」は電話相談編のグループA(宮島謙介氏)と、対面編のグループB(松本智子氏)に分かれて行われた。
宮島氏は専門職として働きながらNGO/NPOでも電話相談をしている立場から実践的な提言をされた。松本氏は対人援助の基本とHIVカウンセリングについて豊富な臨床経験を踏まえて話された。どちらの講座も時間的な制限からロールプレイなどの実習を行うことはできなかった。要望もあったのだが、実習を行うとそれだけで1泊2日などすぐ終わってしまう。別な機会を設けることができればと思う。午後はワークショップ2「NPOマネジメント手法〜人材育成とHIVコミュニティのエンパワメントを目指して〜」。講師は辛淑玉氏。現地に行って油をくみ取れば感謝される「分かりやすいボランティア」とは異なり、医療等についての勉強も必要な「ボランティアの東大」ともいえるHIVにどう人を集めるか。自らをPRする能力の大切さを扱った模擬記者会見を行うなどハードながら笑いの絶えない2時間半だった。
この研修会は参加者や講師の皆さんの熱意に支えられて無事、終了することができた。来年度も研修会でお会できることを願って。
なお、99年度研修会の共催はLAPとJANACが担当させていただきました。
[ よしおか ]
1999年度ボランティア指導者研修会タイムテーブル | ||||||||||||||||||||||||||||||
第1日目 3月11日(土)
第2日目 3月12日(日)
※当研修には「抗HIV薬の効果的な服薬援助のための検討会(服薬検討会)」が協力しています。 |
- レッドリボンさっぽろ<北海道>
- 東北HIVコミュニケーションズ(THC)<宮城県>
- エイズネットワーク埼玉<埼玉県>
- 川口子どもネットワーク<埼玉県>
- HIVソーシャルワーカーネットワーク<千葉県>
- アジア友好の家(FAH)<東京都>
- 生きることと性を考える OYKOTネットワーク<東京都>
- HIVと人権・情報センター<東京都>
- M's foundation<東京都>
- Campus AIDS Interface(CAI)<東京都>
- 特定非営利活動法人 アーユス仏教国際協力ネットワーク<東京都>
- ぷれいす東京<東京都>
- AIDSネットワーク横浜(ANY)<神奈川県>
- H.I.Voice Act<神奈川県>
- 女性の家サーラ<神奈川県>
- HEARTY NETWORK<神奈川県>
- ルーマニア・エイズチャイルド基金<神奈川県>
- エイズ・サポート新潟<新潟県>
- JAPANetwork<愛知県>
- AIDS POSTER PROJECT<京都府>
- メモリアル・キルト・ジャパン<京都府>
- HIVと人権・情報センター岡山支部<岡山県>
- 広島エイズダイアル<広島県>
- 山口AIDSボランティア<山口県>
- 四国エイズプロジェクト(SAP)<愛媛県>
- エイズワーカーズ福岡<福岡県>
- エイズネットワークみやざき<宮崎県>
- HIVかごしま情報局<鹿児島県>
- ライフ・エイズ・プロジェクト(LAP)<東京都>(共催団体)
- JANAC(HIV/AIDS看護研究会)<神奈川県>(共催・協力団体)