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いま、ひとり一人ができること
2001AIDS文化フォーラムin横浜参加報告


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ライフ・エイズ・プロジェクト(LAP)NEWSLETTERイラスト 2001年8月3日(金)〜8月4日(日)まで、かながわ県民センター(神奈川県横浜市)にて2001 AIDS文化フォーラムin横浜(第8回)が開催されました。
 94年に横浜で開催された国際エイズ会議をきっかけに始まったこのフォーラム。会場運営は手弁当のボランティアによって支えられ、講演やワークショップ等のプログラム数は昨年を上回る72にのぼり、3,946名の参加があったそうです。
 4日午後の「バリアについて考える-パラリンピック金メダリスト成田真由美&桜屋伝衛門」はインターネット中継されました。
 なお、2002年は8月2日(金)〜4日(日)に開催予定されます。

RETURN TOAIDS文化フォーラムin横浜ホームページ
http://www.yokohamaymca.org/AIDS/

  8月3日(金)16時〜18時
  ますますPositive???
  HIV(+)のパトと主治医&友人の紳也ドクター。二人は二人三脚でパトの中のHIVと共にPositiveに生きてきたことを振り返る楽しいトークショー。(プログラム紹介文より。以下同)

 現在週刊誌「SPA!」の連載をしながら、自ら経営しているバーで働いているパトさん。紳也ドクターが司会しながら、パトさんに話を伺うトーク形式で和やかなムードで始まった。
「どうしてHIVを持っていると、苦にしなきゃいけないのか?」と昔から明るい性格のパトさんは不思議に思っている。
「今まで35年生きてきて一番良かったことはエイズをもらったこと」と言い切る。その明るさの秘けつは「毎日の生活の中で常に自分の気持ちのコントロールを考えている。今日はどんな気分なのか?」そして「人と話すことで自分の気持ちを落ち着かせている」と。「コミュニケーションは自分のためにある」「コミュニケーションをとることがストレス解消になっている」
「世の中コミュニケーションスキルを持っていない人が多いけど、コミュニケーションスキルは絶対に必要」と呼びかけていた。
「自分はこう考えているけど、どう思いますか?」そんな話ができる相手がいたほうが楽しい。
「誰でも彼でも相談するのじゃなくて、尊敬できる、例になれそうな人に相談しよう」
 こんな言葉が象徴しているように、感染したことにより、自分と向き合いながら生きてきた言葉には重みがあった。エイズに限らず生きていく中でコミュニケーションの必要性を痛感した。そんな彼でも「自分の病気のことを人への告知について悩むことが多い」ようで、「感染の可能性ゼロのセックスをしても、エイズという言葉で相手がビビってしまう」のが残念と漏らしていた。 (セリ)

  8月4日(土)10時〜12時
  結局、やっぱり、コンドーム(岩室紳也)
  HIV感染予防にはノーセックスかコンドームしかない。しかし、コンドームが生活習慣になっているかと言えばNO! である。新しいメッセージつきコンドームにこうご期待。

 自他ともにみとめる(?)達人によるコンドームの正確な使用方法についてのプレゼンは、男性3名の実演もまじえて「ほんとうにけっこう難しいんだな」と参加者が理解するのに効果的であったとおもいます。実際には、暗闇で、ときにアセる状況でつけたりはずしたりするわけですから、「事前学習」や「実習」が必要なのでしょうね。
 コンドームだけで感染を防げないSTDもあり、また破けたり外れたりの事故も多いコンドームですから、「その先」の情報も必要でしょう。参加者はすでに「よく知っている」人が多かったようでした。(堀成美 HIV/AIDS看護研究会)

  8月4日(土)10時〜12時
  学校や地域で役立つ朗読ワークショップ(H.I.Voice Act)
  H.I.Voice誌を活用した朗読ワークショップを実施しそのスキルを伝える。学校や地域で実施した具体例を紹介し、各地での応用を期待する。

 この講座では、まず会話やスキンシップによって、参加者同士コミュニケーションをとることから始まり、これにより会場の雰囲気が和んだところで、エイズに関わる様々な人の声を集めたH.I.Voice誌を用いた朗読ワークショップが行われました。また学校で実施された朗読ワークショップのビデオ紹介などをもとに、学校や地域で朗読ワークショップを行う際のスキル(1. リラックスすること 2. 楽しむこと 3. 感じること)が伝えられました。
 学校や地域でエイズについて学ぶ場合、感染経路や感染防止等の知識面を学ぶことはもちろん大切ですが、それと同様に、感染者の気持ちや感染者のまわりの環境を知り、「何か」を感じ取ることはとても大切なことだと思います。その「何か」を感じ取ることのできる時間が朗読ワークショップにあると感じました。また私自身朗読ワークショップに参加して、一人での朗読や黙読では得られないような場の一体感のようなものを感じとることができました。
 この講座をきっかけに、全国各地で朗読ワークショップが実施され、より多くの方々に「何か」を感じ取る機会が与えられればと思います。(坂東裕基)

  8月4日(土)13時〜15時
  セイファーセックス講座「pro-sex」(講師:桃河モモコ AIDSネットワーク横浜)
  エイズの正しい知識・予防教育の普及をはかるため来場者と共に考え質疑を交わす参加型講座を企画した。

 題名と講師にひかれて参加したこのプログラム。
 まずはじめに体位について48あるということで、そのうち連続した16を実際にみせてもらった。このよいところはコンドームがはずれるのを防ぎ、無断でコンドームをはずすのを未然に防ぐことができるということだった。笑顔でしていたことが印象に残った。
 次に、講義があった。セイファーセックスとはより安全なセックスということで肉体的・精神的・社会的な安全があるということだった。
 精神的安全とは気持ちが傷つかない、気持ちの安全ということで私も共感的に受け止めた。40代男性の中には少なからず、浮気がばれると病気や望まない妊娠よりも社会的地位を失うことを気にしている人がいる、ということで何て気持ちが寂しいんだろうと私は思った。
 セイファーセックスにはコンドームを使うことが大切で、すぐに出せるところに置いておくとよい、それから「私はこうしたい」と伝えることが大切といっていた。
 最後の質問のところで子どもの虐待・性的いやがらせについて触れ、子どもがしたいこと、したくないことをはっきりわかり、いやだと思ってもよくて、そこから逃げてもいいんだということを知らせる活動があるということで、子どもの頃から人権とかプライドとかコミュニケーション能力をしっかり育てていく必要を感じた。
 性産業の現場で働きながら若者たちにセイファーセックスを伝えていっているモモコさんに頼もしいものを感じた。
 これからも本当の話をきかせてほしいと思った。(穂中英美梨)

  8月4日(土)16時〜18時
  国連エイズ特別総会報告(AIDS&Society研究会議 樽井/慶応大学教授、宮田/サンケイ新聞)
 

2001年6月25日〜28日にニューヨークの国連本部で開かれた国連エイズ特別総会について、政府代表団のNGO代表、取材にあたった記者から報告。

 AIDS&Society研究会議の定例会もかねているようで、よく見るひとたちが多かったです。
 国際社会での合意や約束は、国内の政策などにも影響します。今回の会議はいくらお金を出すか、日本は何のイニシアチブをとるのか、ということについて内外の関心を集めていました。
 本番の総会以前また始まってからも水面下交渉で話が決まるそうです。本会議はいわば「発表朗読」の場。サテライト会議は全部把握しきれないほどあり、全体がどう動いて流れているのかは理解しにくい、という話でした。
 最終的に出された「コミットメント宣言」では、各国とも国際社会だけでなく国内の政策にも課題をもち、2003年までに政策立案がたち、2005年には評価を行えるようにする、となっています。
 今の日本の各種の政策はあまりクリアではないようにおもいますが、「外国」という比べるものができたときに、どのような方向へ行くのかは楽しみです。(堀成美 HIV/AIDS看護研究会)

  8月4日(土)16時〜18時
  保健婦−「普通」を守る仕事の難しさ(Peer Network Yamagata[ぴにぃ])
  「保健婦」の筆者、荘田智彦氏を迎え、HIV/AIDSにおける保健婦の役割を改めて検討していく。

 山形県で保健婦として働く、渡會睦子さんは結核が優先の現状でエイズがどこまで近づけるか、結核は連携が取れているのに、エイズは周囲の理解がされていない。そんな中、独自に検査を受けやすい環境作りを工夫している。例えば、検査を受けにくる人が、できるだけ人と接することなく検査を受けられるように、受付を無人にし、採血をする人が、カウンセリングをするなど、専任担当者制をとって対応している。その結果、検査を受ける人の抵抗をなくしている。そして、口コミで検査が受けやすいということが広まり、検査を受ける人も増えきているという。「予算がなくても大丈夫。こんな工夫が全国的に広がればいいのに」と期待をしていた。
 次に感染者の大谷重夫さんから今までの生い立ちや身近な人に理解されたい思いや実名で活動することについての考えが語られた。
 最後に『保健婦│「普通」を守る仕事の難しさ』(家の光協会)の著者の荘田智彦氏から一歩踏み込んだ、次のような意見がだされた。
 予防活動は感染した後の生活がサポートできるようにならなければ、継続されない。そんな中、予防が正しくコンドームをつけよう、だけで済んでしまっている風潮に疑問を感じる。そうなると、子どもを産みにくくなる可能性もある。根本的なコンドームの意味はなんなのか? 考えてもらいたい。また母子感染については、12人に1人の割合で感染するという事実がある。最初から、そのリスクを背負って産むということに関して、産まれてくる子どもの人権はどうなるのか? このようにエイズの問題はエイズ患者だけで考えられるものではない。個人個人がが自分の問題として、愛する人のため、周囲の人々の気持ちを考え、人間的に見ていかなければならない。個人では守りきれない今、社会全体が協力しないと成立しない。(セリ)

  8月5日(日)10時〜12時
  知った気でいるあなたのための「セクシュアリティ入門講座2」(ライフ・エイズ・プロジェクト)
  昨年、ご好評いただいた「知った気でいるあなたのためのセクシュアリティ入門講座」の第2弾。講師は木谷麦子氏です。
※LAPニュースレター版「セクシュアリティ入門講座」はこちら

『リスク・スケールづくり〜異性間性的接触編〜』 昨年に引き続いて二度目となる「セクシュアリティ入門講座2」。今回は木谷さんの体験と記憶による70年代の女性問題、80年代から90年代の同性愛、トランスジェンダー等のテーマとの出会いや、キンゼイスケールの考え等をもとにホモセクシュアル、バイセクシュアル、ヘテロセクシュアル等、様々なセクシュアリティについて話されました。
 講座では、セクシュアリティに関して今回はじめて考えたという方、ある程度知識のある方等様々な方からの木谷さんへの質問もあり、様々な視点でセクシュアリティについて考えることができました。
 今現在学校でどういった性教育が行われているのかは分かりませんが、少なくとも私自身が小、中学生の頃は、性教育でセクシュアリティが多様であることを学ぶこはありませんでしたし、その性教育はむしろひとつのセクシュアリティを前提としたものであったと言えるかもしれません。それぞれ同じ人間のひとつの性のあり方として「セクシュアリティが多様である」ことを今どれだけの人が認識しているのでしょうか。エイズ文化フォーラムだけでなく、全国各地の教育現場や地域でセクシュアリティについてもっと考えていかなければならないと感じました。(坂東裕基)

※ライフ・エイズ・プロジェクト(LAP)は展示ブースで『リスク・スケールづくり〜異性間性的接触編〜』(上イラスト)の実習を行いました。

  文化フォーラムに参加して
  来年もぜひ参加し、また多くのことを学びたい(坂東裕基)

 今年で二度目の参加となるエイズ文化フォーラム。昨年同様に学ぶこと、感じることの多いとても充実した三日間でした。
 今回の参加を通じて感じたことは、前回もそうでしたが、やはり感染する可能性の高い十代から二十代や、一般の方々の参加がまだまだ少ないということです。広く市民に開かれているはずのエイズ文化フォーラムがエイズ対する社会的関心の低下とともに、専門家のためのフォーラムになりつつあるように感じました。十代から二十代、一般の方々に参加を呼びかけるとともに、今後はエイズに関してこれからはじめて考えようとする人や、まだ感染者に対して抵抗のある人でも参加し発言できるようなプログラム作りも必要になってくるのではないでしょうか。
 また私は今回のエイズ文化フォーラムを通して、たくさんのことを学んだだけでなく、たくさんの方と知り合い、様々な考えを聞くことができました。来年もぜひ参加し、また多くのこと学びたいと思います。(坂東裕基)


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