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講座6 |
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初めまして。AGPの村田と申します。今日は「ゲイである自分を語る会」について、運営など実際的な問題について分かりやすいようにお伝えできたらなと考えてきました。よろしくお願いします。
■「ゲイである自分を語る会」
「語る会」はAGPの中でも、大阪、近畿圏を中心として活動を行っているAGP関西の中で1999年から開催していて、2006年11月に30回目を数えました。「語る会」は関西の方で定期的に、今は3ヶ月に1回の割合でやっているのですけども、コンセプトとしては「昼間の明るい時間帯に、真面目に話しすることができたら」ということから始まって、今もずっと続いています。
皆さんはこれからどんなピアサポートグループを作っていくのか、僕はよく知りませんけども、やっぱりピアサポートグループを作っていくにあたっては、まず大事なのが、どんな人に来てもらいたいのかということをはっきりすることと、来てもらった人と何をするのか、この二つが非常に大事になってくると思います。「語る会」でいうと、昼間の明るい時間帯というのが非常に参加者の方にとって大きな要素であるみたいです。やっぱり夜出歩くのは遊びの匂いがして真面目に話ができないんじゃないかとか、お酒を飲んだら真面目に話しても引かれて、自分の居心地が悪くなっちゃうんじゃないか、他の人に話を聞いてもらえなくなる、そんな不安が強くてという方は結構います。
あと、ピアサポートの会の名前なんですけども、関西の「語る会」では「ゲイである自分を語る会」と表題してます。名前を付ける際に、一目見てパッと内容が分かるようにするか、全然分からない名前にするか、いろいろな長所短所があると思います。パッと見て分かるその長所としてはそれだけ人を集めやすいということ。ただやっぱり短所もあって、「ゲイである自分を語る会」という場合、会場を借りた後、その会場までの道筋に目印を置くんですけども、その中で「ゲイである」というところまで書いちゃったら、やっぱりそれだけで「ちょっとこの中に入っていきにくいな」って方がいるので、今日は「ゲイである自分を語る会」とフルネームで出していただいてますけども、普段の会場では簡単に「語る会」とか書いて、そのへんで会場への敷居を低めています。
名前から内容が連想できない場合の短所は、パッと偶然見て何をやっているんだろうかと想像できにくいこと。長所の方は一旦入ってしまうと仲間の中でこういう会だということが分かることと、ただその会はパッと見の名前が分かりづらいから、逆に言えば部外者の干渉がない、そういう長所があります。名前はどちらでも好きな方を選んでもらったらいいと思います。
今、これだけ情報化社会と言われて、ネットなり、ネットの中でもチャットなり、いろいろな方の交流がありますけども、初めてゲイシーンへデビューする時に、実はゲイの方と会うの今日が初めてなんですということで「語る会」を選んでくれる方もいるので、やっぱり「語る会」は安心してセクシュアリティを開示できる、話し合える場として重要性を担っているんだなと思います。
「語る会」も以前はだいたい20代、30代というのが参加の主な層だったんですけども、この頃は10代からも来ますし、あるいは逆に40代、50代の参加も非常に多くなっていて、それだけ時代の変化、50代の人でもきちんとセクシュアリティについて真面目に考えたいなという人が増えているかな。そんな印象を受けています。
■「語る会」の流れ
1.日程の広報・事前アンケートの実施
「語る会」の流れについてお話ししたいと思います。会に来てもらおうと思ったら広報が非常に大事になってきます。AGP関西の「語る会」では主にホームページの掲示板、あるいは他のサイトの掲示板、他のサイトといってもやっぱり真面目な方を対象としているので、真面目な、G-FRONT関西といういろいろな活動をしているサークルとか、あるいは関西の大学のサークルの掲示板に、「こんな催し物がありますのでいらっしゃってください」という書き込みをします。あと、時々、自分たちの個人的な知人、知り合いがそのことを聞いて、僕たちに直接、「こんな会があるなら参加してみたい」ということもあります。ただ広報担当は一括した方がいいと思います。というのはお知らせする人がバラバラだったら、内容もそれぞれバラバラになってきますので、その人その人で対応が異なってきて、後々、小さなトラブルが起こることも多少あります。ですので広報担当者も1人に一括して、基本的に同じ対応していて、その対応が通じない場合、難しい場合は、「こんな人がきているんだけどもどうしようかね」、というふうにメーリングリストで相談したりしています。
「参加したいんです」という希望者から広報担当者に連絡がきた場合は、どんなことを話したいですかとか、当日はどんな名前で参加しますかとか、年令はいくつですかとか、このお知らせはどこで知りましたかとかの事前アンケートを送って回収しています。ただ、その事前アンケートの回答はプライバシーの流出を防ぐために当日に参加すると分かっているスタッフのみに配布しています。
2.参加可能なスタッフの確認・役割分担・用意する物
「語る会」では、参加者の募集はだいたい1ヶ月ちょっと前から始めるのですけども、その頃から、「今回は誰が来れますか?」とスタッフの確認をします。スタッフが少ない場合は大人数では対応できないし、疲労が非常に多いので、スタッフの人数を確認した上で、「この人数だったらこのぐらいの人数を集めても大丈夫かな」と話し合います。きちんと目を向けて対応しようと思ったら、スタッフ1人についてだいたい3、4人くらいが一番いいかなと考えています。
役割分担は受付をする人、受付で集金して、誰が来て、誰がキャンセルしたかといった確認をする人とか、あるいは、その会の司会をする人、ゲーム担当をする人、あと、グループに分かれた場合、グループリーダーは誰にするか、そんなことを決めます。もちろん、1人が頑張ってやってもいいんですけど、そうすると非常に疲れます。司会しながら時間も気にして、どのへんで切り上げようかとか。司会をして、ゲームをする間も自分がしゃべりっぱなしで、そのしゃべりっぱなしの間も他の人がどんな反応をしているか、退屈しているか、非常に聞き入っているか、他の人と話しているかとか。いろいろなことをしながらいろいろなことを見るというのは非常に疲れるので、役割はできるだけ分担した方が楽です。
本番に用意するものとしては、最後に感想を書いてもらうために使う事後アンケートと、その時に使う筆記用具、あとは名札ですね。今日は皆さんは赤い色の名札をしていますけども、スタッフの方は青ですかね。そんなふうにスタッフと参加者の色分けというのは非常に大事だと思います。AGP関西の場合は黄色とか橙色というのは親近感を湧かせる効果があると言われているのでその色を使っています。参加者には他の好きな色を選んでもらっています。事後アンケートでは、印象深かった事、話し足りなかった事、会の進行やスタッフの対応について、機会があればまた参加したいか、こんな「語る会」を開いて欲しい等の希望などを聞いています。基本的に「語る会」では、どんな内容を話したいかという事前アンケートを元にその日の全体ディスカッションなり、グループディスカッションなり展開していくのですけども、時には最初から「10代限定の語る会」というふうに設定したりだとか、あるいは「カミングアウトについて話したい人のためだけの語る会」というふうに設定することもありますので、その時にはテーマ別に特化したバージョンの事後アンケートを使い分けたりもします。
「語る会」に来る人の中には、「他にもいろいろな情報がないかな」、「他にも何かいいサークルとか相談できる場所の情報とかがあったらいいな」、と期待されてくる方もいるので、電話相談の番号とかも書いてあるAGPのパンフレットを置いたり、あるいは「家路」という娘や息子が同性愛者だと知った親に読んでもらうための冊子などの資料を置いたりもしています。
3.
直前ミーティング
「語る会」は13時からスタートしますが、ぶっつけ本番ではなくて、11時半頃から直前ミーティングをスタッフだけが集まってします。何を話すかというと、事前アンケートをざっと集めて、みんなで見比べて、「今回は何歳ぐらいの人が多いな」とか、「こんな話題を話したがっている人が多いな」と相談して、「そうしたらこの人とこの人を引っ付けたら会として盛り上がるし、話も深まるんじゃないかな」とかいう話をしたりします。あるいは事前アンケートの中に非常に難しいことを書いて送ってきて、非常に大きな期待を持って来る人もいます。そういう人についても、「この人はちょっと対応が難しそうだから、心理的な対応が可能な人を当てたほうがいいかな、同じグループに割り振った方がいいかな」、ということを相談します。
4.
「語る会」本番
[受け付け]
「語る会」本番の流れ |
- 受け付け
- 初めの挨拶、グランドルールの説明
- スタッフ・参加者の自己紹介(名前覚えゲーム)
- 休憩(15分位挟んで、緊張の緩和・交流を深める)
- ディスカッション
- 休憩(15分位挟んで、緊張の緩和・交流を深める)
- ディスカッション
- まとめ、感想
- アンケートのお願い、「語る会」スタッフ募集のお知らせ
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「語る会」の本番の流れは以下の通りです。「語る会」では一応、定期収入がある人からは2,000円、無い人からは1,000円という参加費を集めています。参加費を集めながらその場で受付をしてもらっているので、参加者の方が、「この人2,000円だけども自分は1,000円だ」とパッと見て分かるような感じだったら気を悪くするので、さりげなく会計の時に見分ける為の印を付けてもらったりもしています。
例え、10人位、15人位、参加者が集まっても、どうしてもドタキャンして、連絡無しで来ない人もいます。それは受付の段階じゃないとドタキャンするかしないかなんて分からないので、最初は直前ミーティングではドタキャンしないという前提でグループを組んだりするんですけど、ドタキャンした場合はそのグループに偏りが出たりするので、その場合は仕切り直しとして、休憩時間に「あの人が来なくてこのグループがちょっと偏りが出てるけどどうしようか」と、相談して決めます。
[出席者の位置取り等]
「語る会」の出席者の位置取りですけども、円座に並べた椅子に座り、体を隠す物、支える物がない状態で参加してもらいます。いざ本番が始ったら、皆さんには好きな席に座って下さいとお願いするんですけど、やっぱり席の座り方についてもいろいろな決まり事というかちょっと気を付けた方がいいこともあります。基本的にざっと円座組んで並んでもらうんですけども、何かメモすることがあるかもしれないので、基本的に司会者はホワイトボードの近くに座ってもらうことにしています。参加者は初めて来られる方も結構多いので、席に案内する時には「お好きに座ってください」とは言うんですけど、「何かあったら黄色の名札をかけている人間がスタッフなので、質問があったらその人におっしゃってください」ってことも言いますし、スタッフが島状に並んでその間に参加者をはさんで座ってもらうというようにしたら、「何かちょっと困ったことがあったらこっちの方を見たらいいんだな」ということが分かって安心して会に参加できるという効果もあります。
あと、バックに光があったらまぶしくて見にくいですし、その人の表情も分かりませんし、後ろから光があるだけで偉そうに見えてしまう(後光効果)ので、できるだけ強い光源は避けた方がいいと思います。
[初めの挨拶、グランドルール]
会を開くにあたって、毎回、最初に導入としてグランドルールというものを説明します。僕はこんな風に説明しています。
「今回来てもらって、ありがとうございます。ちょっと堅苦しいとは思いますけども、『語る会』では三つのことに注意して会に参加してもらおうと思っています。まず一つめは、話をする時は自分、俺、私、僕を主語として話をしてください。普段の会話の中ではあの人がこう言っただとか、世間ではこんなふうになっているだとかいう物の言い方もありますけども、この会では俺はこう思う、自分はこうしてきた、僕はこう考えた、私はこう感じたというふうに、そんなふうに、私、俺、自分、僕を主語として、語るかたちで話を進めてください。これが一つめです。二つめは誰かが話をする中で、もしかしたらその話に違和感を感じて、それは違うんじゃないかと、そんなふうに反発を感じることもあるかもしれません。でもその時はそれを、『ちょっと待て、それは違う』と話を遮るのではなくて、まず一旦は全部その人の言うことを、話を全部受け止めてください。その人の話を受け止めて聞き終わった上で、『今あなたはこうおっしゃったけども、自分としてはこう考えるし、こうなんじゃないかと思う』と話を進めてください。これが二つめです。三つめは、『語る会』で見聞きしたことは、あくまでこの『語る会』で止めておいてください。もちろん、『今日、こんな会があったんだよ、こんなふうに真面目に話ができる場があるんだよ』、ということを他の皆さんにお話しすることは結構ですし、むしろそれは非常にこちらにとってもうれしいのですけども、ただ、『この会であの人があんなことを言っていた』という話の広め方はやめてください。他の方のプライバシーは守るように、話の内容はここに止めておいてください。以上が三つのグランドルールです。」
とお願いしています。最後に、「携帯電話をお持ちの方は電源を切るかマナーモードに設定するかお願いします」ということも言ってます。結構、そのまま忘れてしまっていて、マナーモードにせずに来ていて、会の中で鳴ってしまうこともあったので、途中からこの注意も入れています。
[自己紹介]
最初にそういう堅苦しいグランドルールを説明したあとで、ただやっぱりその堅苦しい雰囲気が続くとこちらも困るので、参加者の緊張をほぐして親密性を高める事、自他の個別性を認め合う事、自身の発言に責任を持ってもらう事などを目的として「名前憶えゲーム」で自己紹介をします。
ゲームの方法としては、「何々が好きな何々」というふうに自己紹介して、自分が紹介し終わったら、隣の人、隣の人というふうにその紹介の仕方を一巡します。そのあとにゲーム係が、今、覚えた名前、好きなことを、この人は何々が好きな何々さんというふうに一人ずつ他己紹介してくださいとゲームを進めていきます。きちんと名前を覚えてもらうことで「この人もこの会に参加してきた自分の仲間なんだな」、という意識を持ってもらいます。この際、スタッフは何かしらボケたり、笑いをとることも必要かもしれません。
[ディスカッション]
グループディスカッション |
人数が少ないのでスタッフの負担も少なく、より個人的な話題を深め易いが、最初にグループディスカッションを設けると話し切った雰囲気が漂って次のディスカッションがだれ易くなります。また、親密な距離感・雰囲気に飲まれて秘密にしておきたい事を思わず話してしまう危険もあります。2回続けてグループディスカッションにすると、参加者から「もっと沢山の人から話を聞きたかった」との不満が出る事が多いです。話をするメンバーとしないメンバーがはっきり分かれてしまうと、内容・意見が偏り易くなってしまいます(面と向かって反論したり、話題を変える事をためらう)。(参加者は)発言せず黙っていると「無視していると思われるのでは」と不安になったり、話に乗れないと取り残された気分を味わいます。 |
全体ディスカッション |
多くの人から様々な意見を聞く事が出来ます。沈黙に対して「自分が発言しなければ」と云うプレッシャーが少ないので、話を聞きたくて参加した人にとっては居心地が良いでしょう。逆に、人数が多過ぎて緊張が高まったり、距離があり過ぎて相手の反応を確かめにくい為に不安になったりして話す気になれない事もあります。人数が多い為、スタッフは全体の把握や気配りが大変となります。 |
◎誰がどの位話して誰が話していないか、見渡しておく必要がある ◎参加者の参加姿勢(だれている、興が乗っている)を見て、ディスカッションの時間を短縮或いは延長する |
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ディスカッションは大きく分けてグループと全体とでやります。それぞれに長所・短所があります。
グループディスカッションは直前ミーティングで事前にメンバーを決めます。人数が少ないので、スタッフの目が届きやすいし、話も深まりやすいのですけど、親密な距離感にのまれて、ぽろっと本当は隠しておきたかったことを言ってしまうという場合もあります。
全体ディスカッションでは、多くの人からいろいろな意見を聞く事ができますが、距離があり過ぎて、自分がこう話をしているんだけども、他の人はどう感じているんだろうか、どんな反応が返ってきているんだろうかというのを感じ取りにくいという心配もあります。スタッフは人数が多い分、全体の把握や気配りが大変となります。今あの人、足を投げ出して、ちょっと体もたせかけて退屈しているな、どんな風に話を振っていこうかとか、あるいはそろそろ全体ディスカッションも切り上げかな、グループに持ち込んだ方が良いのかなとか、そういう判断もします。スタッフは1人だけではなくて全員に目を行き渡らせる必要があります。
[休憩時間]
休憩時間は参加者同士、あるいはスタッフとが打ち解けて、交流が深まるのに役立ちます。参加状況や全体ディスカッションでの経過を見て、直前ミーティングで決めたグループ分けを再考します。また、パンフレットを用いてAGPなどの広報を行います。
[事後アンケートの実施]
「語る会」を始める時は、もう、参加者もまだ来ていないし、時間もバタバタしているので、スタッフだけでチャチャッと会場作りをするんですけど、ディスカッションが終わったあと、「語る会」を終わる時は参加者の方にも片付けを手伝ってもらっています。人数が多い方が楽だし手早く終わるということもあるのですけども、やっぱり自分たちで作り上げた場を一緒に終わらせるという共同作業というのは終了の儀式として良いのだろうと思います。
そのあと、事後アンケートを書いてもらって回収します。この時に参加者の中で「気が合ったから、これからも連絡を取って友達になりたいな」とかいう関係が結構あります。その場合、個々人で連絡先を交換してくれる分には一向に差し障りないんです。ただ、あの場ではちょっと気恥ずかしくて聞けなかったので、後日、AGP関西に連絡して、「実はちょっとあの人の連絡先を聞きたいんですけど」という問い合わせが時に来ることもありますけども、それははっきり、こちらとしては全部お断りしています。事後アンケートを書いている時に、「あとからAGP関西の担当者に言われても、電話番号なりメールアドレスなりお教えすることは一切しないので、聞きたいなら、このあとも仲良くしていきたいなら、今のうちにアドレス等、連絡先を交換してください」と伝えています。
せっかく「語る会」を開いていますし、参加者の方にも来てもらっているので、もしよかったら、今後もお手伝いをしていただけたらなという思いは僕たちスタッフにもあるので、「もしお手伝いしたいなという人はご連絡ください」とかもお願いしています。「語る会」は3ヶ月に1回と時間が空いていて、その間、参加者同士の交流がありません。その空いた期間を埋めるために「語る会」のメーリングリストで、希望者に「こんな情報がありますよ」と流したり、「mixiの中に『ゲイである自分を語る会』というコミュニティを作っていますので、また良かったら仲良くしましょうね」というお誘いをしています。
5.
反省会
6.感想文の依頼、NLへの報告書の作成
本番が終わった後、反省会をします。スタッフだけが集まって回収した事後アンケートを見るのですけども、この時、「この人とこの人の組み合わせは良かった」だとか、あるいは逆に「ちょっと話す話題とか年齢とか考えて組み合わせてみたけどもあまり話が組み合わなかったな」とか、「この人は事前アンケートでこんなことを話したいと書いていたけども実は本当に話したいことは別にあったみたいだな」とか、ディスカッションの内容の検討や運営上の反省を行います。
AGPにはニュースレターがあるんですけど、そこに載せる報告書を書くので、その報告書を作る担当者も決めます。ただ、その報告書にもグランドルールに則って、「あの人がこんなことを言っていました」とかいう書き方はせずに、「こんな意見が出ました」というふうに書いています。時間が経過するにつれて「語る会」で得た印象や細かいニュアンス等は忘れてしまうので、報告書に生き生きとした雰囲気を持たせる為にできるだけ早く作成する事が望ましいです。
■スタッフの参加姿勢
スタッフの参加姿勢 |
観察者: |
参加者の姿勢や口調・表情・話の展開・話している量等をつぶさに観察します。また、自身がどんな表情や口調でその場に参加しているか、参加者の発言内容にどんな感情や体験が喚起されたかを意識化する事も必要です(関与しながらの観察)。 |
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進行役: |
時間配分や参加者の参加度合い等に気を付けながら(しかも時間に縛られている雰囲気を醸し出さずに)、展開します。また、ディスカッションの中で異なる意見が出た時、それが善悪の二元的な評価に陥らない様に留意する事も重要です。 |
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仲 間: |
観察者や進行役に徹してスタッフが語らない場合、参加者は「自分達の話だけを聞いて、何も語らないのか」と搾取された様な感覚を抱く事があるので、スタッフも或る程度は自身の体験や感情を話して開示した方が望ましいです。また発言しない場合でも、発言者に対して視線を向けたり相槌を入れて頷いたりして「貴方の言葉を真剣に聞いているのだ」と云う姿勢を示す事が重要です。 |
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スタッフの参加姿勢は「観察者」「進行役」「仲間」の3つに分かれると思います。
「観察者」とは、他の参加者がどんな感じで参加してもらっているのか、その場にいることを楽しんでもらっているのか、あるいは逆に退屈に思っているのかを観察すること。この時、キョロキョロ、チラチラと見回すと不審に思われるため、観察動作は大きく行うのが好ましいです。その方が、スタッフが参加者に関わろうとする姿勢を示しやすくもあります。また、スタッフ自身がどれだけの人数に気を配れるのかを把握することも重要です。
また、自分自身を観察することも重要です。スタッフも人間なので、参加者が発する発言の中でカチンと来ることがあったり、カチンとまでは来ないけども何かしらイラつきを感じたりすることもあります。その時に、「あれ、何で? 今、イラつきを感じたけども、今の人のどの辺のことでイラつきを感じたのかな」とか、あるいは、「今イラつきを感じているんだけども、その人にイラつきを感じているというよりも、その人と似たようなことを話している別の人がいて、その別の人と似ている感じがするから、それでちょっと自分としてイライラ変な感情を抱いているのかな」と、会に参加することで出てきた感情などをその場で整理するということも大事です。
スタッフには、見るだけではなくて、実際に関わる進行役としての役割もあります。一口に参加者といっても、喋る人、喋らない人というのが分かれてきます。喋る人はこちらが水を向けなくて非常に話をしてくれますし、逆に話さない人はこちらが水を向けない限り黙っていて、体も縮こまって、居心地の悪さを感じている場合というは非常に多いので、「あの人はたくさん喋っているから今度この人に振ってみよう」とか、そういう介入も大事になってきます。
三つめは「仲間」です。スタッフだけは高みの見物というのは避けたいです。僕もゲイですし、参加する方も皆さんもゲイです。そういうところでピアなんですけども、やっぱり会に参加する参加者というのは話すだけではなくて、聞きたいという人もいるので、スタッフが喋らなかったら、「なんだ、自分の話を聞くだけ聞いて、何も言ってくれないのか、何も教えてくれないのか」と搾取されたような感覚を受けることもあるので、スタッフも自分の体験とか感情を話すのが非常に大事になってきます。「今、あなたはこんなことを言ってきたけども、自分も同じようなことがあって、その時はこんなふうに感じた」というように。参加者の思いに応えるというのも大事になってきます。参加者が切迫している感覚とかを、スタッフが受け止めきれないこともあると思います。ただその時も、「自分はこう思う」という発言ができなくても、「うん、うん」と話の折り目折り目に相づちを入れて、「自分は言葉なり発言なりは入れられないけども、あなたの言葉は、あなたが悩んでいるんだということはきちんと受け止めているんですよ」ということを分かりやすい形で示すことは非常に大事だと思います。
■ピアサポートを長く続けるコツ
タイムテーブル(例) |
11:30 |
直前ミーティング |
12:50 |
開場 |
13:00 |
受け付け開始 |
13:05 |
挨拶、グランドルールの説明 |
13:10 |
ゲーム |
13:30 |
休憩 |
13:45 |
全体ディスカッション |
14:50 |
休憩 |
15:05 |
グループディスカッション |
16:20 |
まとめ |
16:30 |
会場の片付け、アンケートの配布 |
17:00 |
閉会 |
17:30 |
反省会 |
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最後になりますけども、ピアサポートを長く続けるコツというのはあります。1人だけだとしんどいです。あれもしなければいけない、これもしなければいけないでは、長続きもしません。ピアサポートだけしているわけではなくて日々の生活もしているわけなので、1人ではなくて他の仲間を見つけて開催して、自分が行き詰まった時には、その仲間に役割なりをバトンタッチすることだって必要です。「今、こんな困ったことがあるんだけども、君だったらどうする?」と意見交換というのも非常に大事になってくると思います。
参加者には、「語る会」に来てよかったという感想があるんですね。スタッフの方もそんな感想を持てたらと思います。「語る会」にスタッフとして手伝いに来たけれども、何かしら得るもの、お土産がなかったら、「疲れた、しんどい、もういいや」となっちゃうので、スタッフ自身も楽しめたらなと思います。
あと三つめにちょっと言葉がキツいかもしれませんけど、どんなサポートグループを開くにしても、馴染めない人は出てきます。「語る会」は、「自分はこう思う、ということは話して、聞く場」なので、決して議論する場ではないのです。こっちが正しい、お前が悪いという議論に持ち込む場ではない。もちろん、初めて参加して、そういう議論に発展することもあるかもしれませんけども、そういうことが2回、3回と続いた場合には、会の内容や雰囲気というものが大分変わってきて、崩れてしまうので、そういう方はお断りする場合があります。非常に厳しい意見ではあるのですけども、長続きさせようと思ったら非常に大事なことなのではないかなと思います。
例として、ざっと最後にタイムテーブルをご紹介しておきます。
以上が、「ゲイである自分を語る会」の実際的な運営の運びでした。ご静聴有り難うございました。
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